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社説・コラム

天風録 「「源燃丸」難破?」

 船を下りるとタクシーで街に買い物へ。「爆買い」をする中国人ではなく、船員のことだ。その船は北海道室蘭市の港にいかりを下ろしたままらしい。民放ニュースによると、乗組員らは相当な高給を取るというから驚く▲使用済み核燃料を福井県から再処理工場へ運ぶ「開栄丸」である。9年前に60億円で造った。維持費も年9億円かかるが新型転換炉ふげんの核燃料などを4回運んだだけ。それ以来、点検以外は港を出ていないと聞く▲荷を出したり受けたりする側も暗礁に乗り上げる。ふげんは運転を終えた。高速増殖炉もんじゅはトラブル続きで停止中。見限った原子力規制委員会は近く国に運営主体を変えるよう勧告し、廃炉を含めた抜本見直しを迫る▲政府は増殖炉を「夢の原子炉」とうたってきた。その航路が見通せぬまま、荷のない船は日がな一日、港でぷかぷか。ウラン資源を活用するはずの核燃料サイクルは順風満帆どころか、難破したも同然といえるだろう▲税金の無駄だ―。原発政策に批判的だった河野太郎行革担当相も先日まではブログで開栄丸をやり玉に上げた。入閣して脱原発の帆を降ろしたと言われぬよう、大なたを振るってもらいたい。

(2015年11月6日朝刊掲載)

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