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社説・コラム

『美術散歩』 ヒロシマの心象託す

 「千馬弘子作品展 祈り」 8日まで。広島市中区上八丁堀4の1、ギャラリーG。

 被爆70年の節目に、広島市中区の千馬弘子さん(79)が心象を託した14点。パンドラの箱を模したブーケ、渦のようにさまよう魂、流れる歳月にも広島の川にも見える線…。アクリル絵の具と鉛筆で描いた半抽象の画面には、核に手を染めた人類のおごりや破壊への怒りとともに、平和への祈りがこもる。

 いずれもタイトルはない。「再生」を思わせる色彩で目を引く作品=写真=は、街に浮かぶ赤い物体。「破壊された建物は再建できても、人の心や魂は元に戻りますか」と問われているようだ。

 福岡市出身。1960年に結婚で広島へ。被爆の実情に触れ、心の傷が癒えない人にも出会った。人ごとに思えず、画題と切り離せなくなった。広島平和美術展の運営にも携わり続ける。育児や介護に追われた時期も離さなかった絵筆。熱い思いが伝わってくる。(森田裕美)

(2015年11月6日朝刊掲載)

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