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被爆地が問う原発 広島でシンポ 内外の識者議論

 国際シンポジウム「問われる被爆地・被ばく国の役割―3・11原発事故を受けて」(広島市立大、中国新聞社主催)が19日、広島市中区の広島国際会議場であった。福島第1原発事故を踏まえ、原発と原爆による「被ばく」を経験した日本に期待される役割について議論。約280人が聞き入った。

 わたり病院(福島市)の斎藤紀(おさむ)医師▽吉岡斉・九州大副学長▽ドイツのレイチェル・カーソン・センターのフランク・ユケッター特別研究員▽米国の反核団体トライバリー・ケアーズのマリリア・ケリー代表―がパネリストを務めた。

 かつて広島で勤務し、被爆者医療に携わった経験がある斎藤氏は、福島の被災者の窮状を説明した上で、国家補償を求めてきた被爆者の運動に言及。「被災地は、またも国民を見捨てる姿勢は許さないという被爆者の声を求めている」と訴えた。

 政府の事故調査・検証委員会委員の吉岡氏は、国内の原発について原子炉の老朽化や、地震、津波などで被災しやすい立地の問題点を指摘。「脱原発をすべきだが20年くらいかかる。その間の厳重な対策が必要」と述べた。ユケッター氏はドイツが脱原発に転換した経緯を解説。ケリー氏は「オバマ政権は核軍縮に逆行する動きが目立つ」とし、日本の平和団体との連携に期待を寄せた。

 報告者として登壇した被爆者、田中稔子氏は健康への不安などを語り、福島の被災者に思いを重ねた。中国新聞の連載「フクシマとヒロシマ」を担当する下久保聖司記者は被災地の様子を説明。コーディネーターは市立大広島平和研究所の水本和実副所長が務めた。(田中美千子)

(2011年11月20日朝刊掲載)

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