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福島の放射能汚染 生活への影響 福島大・西崎伸子准教授に聞く

 今なお収束しない福島第1原発事故。放射能汚染が及ぼす生活リスクを研究する福島大の西崎伸子准教授(41)は、子育て中の母として、被災地の子どもを被曝(ひばく)の心配がない場所で遊ばせる企画や情報発信に取り組む。今月、広島市でのシンポジウムに参加した西崎さんに、福島の子どもを取り巻く現状や課題を聞いた。(森田裕美)

 ―福島の子どもたちにどんなリスクがあるのですか。 
 登下校の際にマスクを着用したり、遠足や運動会が中止や延期になったりと子どものストレスは大きい。外遊びが十分にできないため、おなかがすかずに食事量が減って体重が増えないとか、発達の遅れを懸念する声も出始めている。

 ―親も心配ですね。
 うちの6歳の娘も、かつては伸び伸び自由にさせていたのに「葉っぱに触らないで」「地面には座らないで」と神経質にあれこれ制限をしてしまう。そんな自分自身もつらい。今は毎週末のように福島県外に連れ出し、思いきり遊ばせている。でも福島に戻り新幹線を降りると「もう息をしちゃ駄目なんだよね」と言う。本当に切ない。

 ―学校の環境は守られていますか。
 給食が問題。子どもは大人より放射線の影響を受けやすいにもかかわらず、多くの自治体は「国の暫定基準値以下なら大丈夫」との立場を変えない。例えば放射性セシウムが500ベクレル以下の490ベクレルなら食材に使う。それでは保護者の不安は拭えない。私は今、娘に弁当を持たせている。

 もはや行政は当てにならないと、保護者は学校や町内会単位で、被曝の恐怖と闘いながら「決死隊」となって高圧洗浄機を使い、校内の洗浄や表土除去作業に参加している。

 ―震災から8カ月。制約の多い暮らしが長く続きますね。
 子どもたちの積算被曝量は日々確実に増えており、不安を抱えて生活することに、みんな疲れが出始めている。放射線は目に見えないため、問題を「なかったこと」にもできる。地域住民の意識には格差があり、かえって不安を口にしづらく、平静を装って生活する人も多い。見える形にしなければ防護もできない。私は常に数値が見える線量計を携帯している。

 ―親の意識や対応次第で子どもの被曝量に差が出そうですね。
 だからこそ公的に子どもを守る仕組みが必要と感じる。通学路と自宅の放射線量測定や給食の食材には、子ども向けの厳しい基準を設けるべきだ。

 ―離れた地で、私たちに何ができますか。
 原発事故が引き起こした生活への影響は、福島ローカルではなく、日本全体の問題。福島の現実を忘れずに、目を向け続けてほしい。

にしざき・のぶこ
 1970年京都市生まれ。京都大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科単位取得退学。2006年から現職。専門は地域研究。研究者らでつくる「福島乳幼児・妊産婦ニーズ対策プロジェクト」で情報発信などを担う。

(2011年11月21日朝刊掲載)

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