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小水力発電 高まる関心 岡山県 「16年度までに30施設」目標

売電価格 普及への焦点

 8月に成立した再生エネルギー特別措置法を追い風に、岡山県内で出力千キロワット以下の小規模な水力発電への関心が高まっている。県は2016年度までに現在の4倍強の30施設に増やす目標を打ち出す。ただ既存の小水力発電所の経営は厳しく、新規参入への障壁も多いのが現実だ。原発への依存度を下げるエネルギー政策の転換と連動した国の動きとともに、県の支援策が普及の鍵となる。(永山啓一)

 鳥取、兵庫両県に接する岡山県西粟倉村では、村営の小水力発電所の改修問題が浮上している。「自然エネルギーの活用を進めることで村のPRにつなげたいが、職員の人件費を考慮すれば収支は赤字。数億円必要な改修をするべきかどうか…」。上山隆浩産業建設課長は思案する。

老朽化 破損相次ぐ

 1966年に完成した西粟倉発電所は出力280キロワット。557世帯の村で必要な電力の20~25%を賄える。村を貫く吉野川から1.7キロ水路を引き、落差68.9メートルの導水管に一気に水を流して水車を回し、電気をつくる。

 昨年度、中国電力への売電単価は1キロワット時当たり5.97円、売電額は1413万円。一方、導水管の水漏れ補修などに700万円掛かり、利益は380万円だった。人件費を差し引けば実質赤字。稼働から45年がたち施設の破損が相次ぐ。  小水力発電所は農村に電気が不足していた60年代を中心に建設された。岡山県内にはJAや自治体などが運営する7施設があり、5施設が築40年以上。多くが嘱託職員の採用などで経費を抑えている。

「既存」は個別交渉

 国は特措法に基づき、自然エネルギー電力を電力会社が買い取る固定価格を来年3月に決める予定だ。ただ既存施設の電力は対象外。従来通り電力会社との個別交渉となる。

 このため、中国地方53施設の運営団体で構成する中国小水力発電協会は国や自治体に、既存施設も固定価格での買い取り対象に加えることや、施設の更新、改修への補助制度創設を求めている。

 協会事務局を担うJA広島中央会(広島市中区)の土井崇司農政広報課長は「家庭用の太陽光発電の売電単価は現状で42円。小水力発電は平均9円と低く、施設の維持、管理が困難になっている」と訴える。

利点の周知 不可欠

 岡山県は現在策定中の中期行動計画案で、小水力発電所を16年度までに23カ所新設する方針を示した。8月には法案審議の過程で国が示した買い取り単価(20円)を前提に適地28カ所も公表した。民間サイドでも企業やNPO法人が昨年10月、県小水力利用推進協議会を設立。適地調査や勉強会に取り組む。

 だが出力1キロワット当たり200万円とされる初期費用や3年程度かかる河川法などの手続きがネックになり、具体的な計画は進んでいない。協議会事務局のNPO法人おかやまエネルギーの未来を考える会(岡山市北区)の広本悦子会長は「採算の見通しが立てにくく、なかなか事業化に踏み出せない」と話す。

 現状ではハードルが高い小水力発電の普及。買い取り価格の設定が最大の焦点で、国や県によるハード、ソフト両面の支援や水利用の規制緩和も必要になる。コストは電気料金に上乗せされる。安全で二酸化炭素を出さず、エネルギーの地産地消につながる―。そんなメリットを県民に説明する努力も欠かせない。

再生エネルギー特別措置法
 自然エネルギーの普及を目的に8月に成立。来年7月に施行される。企業や家庭が太陽光や風力、小水力などで発電した電力の全量を有利な価格で長期間買い取るよう、電力会社に義務付けた。費用は電気料金に転嫁され、最終的に利用者である企業や家庭の負担となる。国は来年3月を目途にエネルギーの種類や規模別に買い取り単価や期間を決める。

(2011年11月21日朝刊掲載)

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