「けが心配」島外避難なし 伊方原発防災訓練 山口県八島「超高齢化」 屋内退避に限定
15年11月10日
四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の過酷事故を想定した国の原子力総合防災訓練に参加した山口県と同県上関町は9日、原発30キロ圏に一部がかかる同町の離島八島で屋内退避に限定した訓練を実施した。避難指示が出た場合の集合訓練は「お年寄りが多く、けがの恐れもある」と見送られた。「超高齢化の島」は避難計画の実効性に課題を残したまま、来春以降の再稼働を迎えることになる。(井上龍太郎、折口慎一郎)
町中心部の南約12キロに浮かぶ八島。訓練では屋内退避を指示する防災無線を受け、自治会役員2人が16世帯を手分けして回った。島民23人のうち22人が65歳以上。玄関から大声で繰り返し呼び掛けて在宅を確認し、約20分で完了した。
行き来する道は傾斜が急で、滑りやすい。見回った八島最年少の漁業岡田雄一さん(63)は「体が動く者が助けて回らないと島は成り立たない」と汗を拭った。
町が作成した避難計画では、放射性物質の放出を伴う原子力災害が起きた場合、島民は八島ふれあいセンターに集合後、定期船か漁船で本土の中央公民館に避難する。
防災訓練を初めて実施した2013年、島民は手押し車やつえを使ってセンターに集まった。全員がそろうまで約30分を要した。町は昨年、訓練内容を屋内退避だけに切り替え、ことしも踏襲した。本土に船で脱出する訓練はこれまでに一度も実施されていない。
八島区長の大田勝さん(77)は「必要性は分かるが、慌てたお年寄りが転んでけがをする方が怖い」と案じつつ、「島だからすぐには逃げられない。実際には避難指示の連絡が町から来て、元気な者が島民を1人ずつ港まで連れて行くことになるだろう」と話す。
全員が安全に集まれるのか、海が荒れる冬場に船を出せるのか。不安は解消できないままだが、県の坂本竜生危機管理監は「計画通り進み、大きな課題はなかった」と訓練を総括。島外避難の訓練は「今後実施する」と述べた。
(2015年11月10日朝刊掲載)
町中心部の南約12キロに浮かぶ八島。訓練では屋内退避を指示する防災無線を受け、自治会役員2人が16世帯を手分けして回った。島民23人のうち22人が65歳以上。玄関から大声で繰り返し呼び掛けて在宅を確認し、約20分で完了した。
行き来する道は傾斜が急で、滑りやすい。見回った八島最年少の漁業岡田雄一さん(63)は「体が動く者が助けて回らないと島は成り立たない」と汗を拭った。
町が作成した避難計画では、放射性物質の放出を伴う原子力災害が起きた場合、島民は八島ふれあいセンターに集合後、定期船か漁船で本土の中央公民館に避難する。
防災訓練を初めて実施した2013年、島民は手押し車やつえを使ってセンターに集まった。全員がそろうまで約30分を要した。町は昨年、訓練内容を屋内退避だけに切り替え、ことしも踏襲した。本土に船で脱出する訓練はこれまでに一度も実施されていない。
八島区長の大田勝さん(77)は「必要性は分かるが、慌てたお年寄りが転んでけがをする方が怖い」と案じつつ、「島だからすぐには逃げられない。実際には避難指示の連絡が町から来て、元気な者が島民を1人ずつ港まで連れて行くことになるだろう」と話す。
全員が安全に集まれるのか、海が荒れる冬場に船を出せるのか。不安は解消できないままだが、県の坂本竜生危機管理監は「計画通り進み、大きな課題はなかった」と訓練を総括。島外避難の訓練は「今後実施する」と述べた。
(2015年11月10日朝刊掲載)