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黒い雨データ解析検討 放影研 科学的価値には疑問

 広島、長崎で被爆直後に計約1万3千人が「黒い雨」を浴びたと回答したデータの存在が判明した問題で、保管する放射線影響研究所(放影研)の大久保利晃理事長は21日、広島市南区の研究所で会見した。広く公開してこなかった理由を「科学的価値が低いと判断したのだろう」と説明。データを精査し解析できるかどうか検討する方針を示した。

 データは1950年代から続く被爆者の寿命調査研究の事前準備で、広島、長崎両市の約12万人への面接調査で聞いた質問の一部。「原爆直後雨ニ逢イマシタカ?」の問いに約1万3千人が「Yes」を選択した。雨に遭った場所や被爆後の発熱や脱毛など14種類の症状の有無、程度、発症時期も尋ねている。

 大久保理事長は「黒い雨の影響を調べる調査ではない。意図的に隠していたわけではなく、統計的偏りが大きくあまり役に立たないと判断したのだろう」との見解を示した。

 一方で、黒い雨の援護対象となる国の指定地域見直しで「データへの関心が高まっている」として、降雨地域の分布図を作ることなどを検討するとした。

 2003年から保管資料のデータベース化を進めていたところ、約1万3千人が黒い雨を浴びたと回答しているデータが含まれることが分かったという。

 広島大原爆放射線医科学研究所の星正治教授(放射線物理学)は「黒い雨に降られたと回答した人の、その後の症状まで調査した記録はない。降雨地域や影響を解析し、生のデータもできる限り公表すべきだ」と指摘している。(田中美千子)

(2011年11月22日朝刊掲載)

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