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核問題の「知識の泉」 日本軍縮学会が辞典出版 「共通の土壌での議論に」

 核兵器をはじめとする大量破壊兵器や、対人地雷などの軍縮問題を研究する学者らでつくる日本軍縮学会(会長・秋山信将一橋大大学院教授)が、「軍縮辞典」を出版した。核兵器の問題を考える際に役立つ、いわば「知識の泉」。「被爆国の市民、研究者、政府関係者が共通の土壌で議論する際の手引に」との期待も込められている。(金崎由美)

 2009年に設立された同学会が5周年記念事業として取り組んだ。大学の研究者、外務省や防衛省の担当職員、核兵器問題を追う平和団体メンバー、通信社記者ら124人が個人の資格で執筆に参加。軍縮問題を網羅した辞典の出版は、国内では初めてとなる。

 820項目で構成。「核兵器の非人道的結末」などの核兵器廃絶をめぐる最新のキーワード、「世界の原子力企業」「ロケット」など軍縮に関連して知っておきたい言葉も幅広く収録している。

 信山社刊。四六判、531ページ。5400円。広島市内の一部書店や大学の書店などで販売している。

編さん委員長の黒沢初代会長に聞く

被爆地でも活用を

 軍縮辞典の編さん委員長を務めた日本軍縮学会の初代会長、黒沢満大阪女学院大大学院教授=写真=に出版の狙いや思いを聞いた。

 核兵器の「非人道性」に焦点を当てた核兵器廃絶の議論が、被爆70年の節目に盛り上がっている。反核を訴える非政府組織(NGO)などは積極的に政府に政策提言し、影響力を発揮している。日本でも、外務省の実務者がNGO関係者らと定期的に会って議論するなど、以前は考えられなかったような変化が生まれている。

 軍縮に関する広く正確な知識を持ち、用語を知る。異なる意見を持つ各分野の人たちが冷静に議論する第一歩であり、市民の声が政策にも反映されていくことにもつながる。広島、長崎からの発信力もより高めるための一冊として、被爆地でも活用してほしい。

(2015年11月10日朝刊掲載)

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