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言論統制下 熱い創作意欲 「戦後占領期の広島の文芸」展 広島市立中央図書館

 占領期の広島での文芸活動を紹介する企画展「戦後占領期の広島の文芸」が、広島市中区の市立中央図書館で開かれている。同市文化協会文芸部会と同図書館の主催。連合国軍総司令部(GHQ)により表現の制約を受けた実態や、復興と文芸活動の活発化をたどっている。(伊藤一亘)

 会場は俳句、短歌、詩、散文、児童文学、文芸誌の各分野で、占領期の約7年間に発行された書籍や同人誌などの資料約200点を展示する。

 GHQは1945年9月から、新聞や書物を対象にGHQ批判などを禁じるプレスコードを敷き、それに基づく検閲を実施。特に広島では原爆に関する表現が大きく制限された。

 詩人の栗原貞子が夫と46年3月に発行し、「原爆の残虐性を表現した」とプレスコード違反を指摘された総合誌「中国文化」や、米国メリーランド大の「プランゲ文庫」が所蔵し、検閲を示す削除線が引かれた栗原の詩歌集「黒い卵」のコピーなどをあらためて紹介している。

 「呪(のろ)ふべき原爆」の「呪ふべき」の部分が塗りつぶされた児童向け雑誌「銀の鈴」創刊号も。検閲を逃れて47年12月にひそかに100部だけ発行された歌人正田篠枝の歌集「さんげ」の貴重な原本もある。広島市出身の作家梶山季之が64年から65年にかけ、戦後の占領政策を描いて週刊誌に連載した「小説GHQ」の自筆原稿も展示している。

 一方、戦争の終結は、戦時体制の解放を意味する新たな時代の幕開けでもあった。詩人峠三吉が手掛けた「われらの詩」をはじめとしたサークル詩誌の隆盛や、職場を拠点に生まれた機関誌的な文芸誌も紹介。学制改革で新たなスタートを切った広島大学や、皆実、舟入など市内の高校で誕生した文芸誌も並べ、若者たちの創作への情熱を伝えている。

 同部会による企画展は、大正期から終戦までを振り返り、2007年に開催した「掘り起こす広島の文芸」に続く第2弾。山田夏樹部会長は「占領下の言論統制の中、自ら表現を抑制しながらも、原爆文学を含めた膨大な数の本や雑誌が出版された。当時の文芸活動を見つめ直すことで、広島の文芸の発展につなげてほしい」と話していた。

 展示は12月4日まで(月曜日と11月30日は休館)。26日に短歌、散文、詩、12月3日に俳句、児童文学、文芸誌の各分野で、いずれも午後1時半から解説・報告会を開く。

(2011年11月25日朝刊掲載)

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