×

ニュース

南方留学生の被爆継承 広島大、2人を学長特別表彰

 広島大(東広島市)は13日、前身の広島文理科大在学中に被爆、亡くなったマレーシア人の南方特別留学生サイド・オマールさん=写真(広島大文書館提供)=の慰霊や、存在について語り継ぐ活動をしている2人を表彰した。被爆70年の節目に、学長特別表彰というかたちでたたえた。

 園部敏江さん(68)=京都市伏見区=は、同市にある墓に参り続ける。当時19歳だったオマールさんは帰国途中に京都市で亡くなり、人知れず埋葬されていたという。園部さんの父健吉さん(1983年死去)は61年、同市の寺にイスラム様式の墓を建てた。74年には「墓を守る会」を結成。家族ぐるみで墓を見守ってきた。

 会は2008年に解散したが、園部さんは墓参を続けている。「異国に来て、原爆で亡くなるとは胸が詰まる。どうか安らいでほしいとの思い」と話す。

 広島大元職員新見博三さん(76)=広島市中区=は職員時代、当時の飯島宗一学長(69~77年に在任)にオマールさんたち南方特別留学生の被爆について語り、大学関係者が毎年、京都市での法要に参列するきっかけの一つとなった。昨年は京都から広島に来た小学生を留学生が寄宿していた寮の跡近くに案内した。

 東広島キャンパスであった授与式には、新見さんが出席した。自身も6歳で被爆、原爆資料館(広島市中区)の案内ボランティアもしている新見さんは「平和とは何か、若者が考えるきっかけになる活動を続けたい」と話していた。(新本恭子)

(2015年11月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ