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60年ぶり 復興の調べ アールトネンの交響曲第2番 広島で再演

 フィンランドの作曲家エルッキ・アールトネンの交響曲第2番「HIROSHIMA」が16日、広島市で60年ぶりに響いた。ヒロシマ関連の楽曲収集に取り組む市民グループ「ヒロシマと音楽」委員会が、眠っていた作品を見つけ、同市の被爆70年事業として広島交響楽団による再演が実現。遠く北欧から被爆地に思いをはせた曲に約700人が聞き入った。(余村泰樹)

 交響曲はアールトネンが原爆投下4年後の1949年に作曲。広島での演奏は、作者に曲を託された指揮者、故朝比奈隆率いる関西交響楽団(現大阪フィルハーモニー交響楽団)が55年、平和記念公園(中区)内にあった市公会堂で日本初演して以来となった。

 この日、中区のJMSアステールプラザであった演奏会では、同委員会の能登原由美委員長(44)が「アールトネンと広島の人々が心を通い合わせた曲。音楽を通じ、ヒロシマや核、未来への思いを共有する場になれば」と呼び掛けた。

 その後、広響の元音楽監督・常任指揮者、高関健が指揮し、原爆投下の爆発音や、惨禍を乗り越えていく力強さを表現した音色を響かせた。

 演奏会の後半は、被爆40年に團伊玖磨が作曲した交響曲第6番「HIROSHIMA」。ソプラノ並河寿美と横笛の赤尾三千子を迎え、広島の再生や復興を高らかに歌い上げた。中国新聞社などの主催。

亡き父へ思い 次男ら初来日 アールトネンの交響曲第2番 広島で再演

 作曲家エルッキ・アールトネンの次男マルクスさん(62)と家族が16日、広島市中区の平和記念公園を訪れた。

 亡き父が被爆地にささげた楽曲の再演を聞くため、妻や娘と初来日したマルクスさん。慰霊碑に花を手向けた後、手を合わせた。「ヒロシマと音楽」委員会の能登原由美委員長の案内で、原爆ドームや原爆資料館を見学。原爆投下の悲劇を目の当たりにし「言葉にならない」と話した。演奏会では目に涙を浮かべて聞き入り、「父も喜んでいると思う」と語った。(余村泰樹)

(2015年11月17日朝刊掲載)

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