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「核時代」 記録映画で問う 祖父が被爆者を治療 映像作家ドメーニグさん 23日中区で日本初上映

 原爆被害や福島第1原発の事故を通じ、核時代に疑問を投げ掛ける記録映画「太陽が落ちた日」をスイスの映像作家アヤ・ドメーニグさん(43)がつくった。原爆投下直後から被爆者を治療した祖父の足跡を追ううち、核被害を世界へ伝えたいとの思いにかられ、5年かけて完成させた。広島国際映画祭に出品。23日午前11時から広島市中区のNTTクレドホールで日本初上映する。(田中美千子)

 母方の祖父、土井茂さん(1991年に77歳で死去)は広島赤十字病院(現広島赤十字・原爆病院、中区)の内科医だった。あの日、疎開先の県北部から出勤中、芸備線の車中できのこ雲を目撃。病院に駆け付け、治療に当たった。

 映画では、祖母清美さん(2013年に87歳で死去)が被爆治療をいったん切り上げ、疎開先に戻った茂さんの様子などを述懐。放射線の恐ろしさを伝え続ける当時の看護師や軍医の証言活動にも密着した。福島の原発事故の被災者親子も取り上げている。ナレーションはドイツ語。日本語字幕付きで78分。

 茂さんは求められても体験を語らなかったという。ドメーニグさんは家族の物語を紡ごうと、10年春に祖母の撮影を開始。原爆を知るにつれ「欧州に伝えたい」と思いを募らせ、映画の脚本を書いた。監督を務め、スイスとフィンランドの各放送局の出資を得て、今夏に完成。スイス・ロカルノ国際映画祭で公開した。

 ドメーニグさんは「時が過ぎると人は忘れてしまうが、ヒロシマもフクシマも今に続く問題。映画が考える機会になれば」と願う。23日は上映後、トークショーに出演する。映画祭は市内4会場で20~23日にあり、1日券2千円(前売り1500円)、通し券3500円(同3千円)。

(2015年11月19日朝刊掲載)

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