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遺品に宿る思いを写す 写真家石内さんドキュメント映画 小谷監督と広島で対談

 広島市などで公開中の映画「フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように」は、被爆者の遺品を撮った連作でも知られる写真家石内都さんをメキシコで取材したドキュメンタリーだ。石内さんと小谷忠典監督が同市内の上映館で対談、映画制作を振り返り、写真論を交わした。

 石内さんは2012年、メキシコを代表する女性画家フリーダ・カーロ(1907~54年)の博物館(メキシコ市)から依頼され、現地でフリーダの遺品を撮影した。フリーダが身に着けた民族衣装やコルセット、靴、化粧品…。映画は、遺品と対話するように撮影を進める石内さんの姿を追う。

 石内さんは「スキャンダルにまみれたフリーダのイメージとは違う、彼女の日常に触れた手応えがあった」と振り返る。遺品を撮りながら「朝起きて、ごはんを食べて、絵を描いて、そして、何もしない時間の彼女とも出会えた気がした」。

 学生時代から石内さんの作品に刺激を受け、メキシコへの同行を志願した小谷監督は「石内さんの撮影に立ち会う私も、フリーダが一人の女性に戻っていくように感じた」と語る。フリーダの母親の故郷オアハカ州へも足を延ばし、母から娘へ受け継がれる民族衣装の刺しゅうの技と心を取材、映画に盛り込んだ。

 石内さんは「遺品というのは、残る意味があって残っている」と強調する。自分の主張を遺品に託すのではなく、「遺品自体に宿っている思いにどう寄り添い、写し取るか」。被爆者の遺品に対するのと同じ姿勢で、フリーダの遺品とも向き合ったという。

 上映は広島市西区の横川シネマで30日まで、山口市の山口情報芸術センターで23日まで(それぞれ休映日あり)。(道面雅量)

(2015年11月20日朝刊掲載)

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