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「核被害者の権利」訴え 「憲章要綱草案」を採択 広島での世界フォーラム閉幕

 広島国際会議場(広島市中区)で開かれていた「世界核被害者フォーラム」は23日、議論を総括した「広島宣言」とともに、放射線被害を強いられずに生きる権利の保障などを明記した「世界核被害者の権利憲章要綱草案」を採択し、3日間の日程を終えた。

 この日は9カ国200人余りが出席。広島宣言は、「核時代を終わらせない限り人類はいつでも核被害者になる」とし、「核と人類は共存できないことをあらためて確認した」と強調。原発の中止、核兵器禁止条約締結や劣化ウラン兵器の保有禁止などを求めた。

 広島宣言を基にした要綱草案は、全ての人に「自然・医療用放射線のほかには被曝(ひばく)を受けない」「被曝労働を強制されない」などの権利があると明記。核被害を受けた人は謝罪と補償を求めることや、放射能汚染地に帰還しないことで不利益を受けない権利があるとした。世界中で核被害に抗する人に活用してもらうため「草案」として発信する。

 この日は1、2日目の討論のまとめに続き、「今後の核被害者ネットワークをどう築いていくか」をテーマに討論。原発問題では、福島第1原発事故を受けて原発メーカーの責任も問う訴訟を起こし、支援を広げようとしている活動などが報告された。核兵器廃絶への道筋をめぐっては「核兵器の非人道性」を軸に、核保有国の行動を待たなくても禁止条約への機運を高めようとの意見が出た。

 同フォーラムは広島と長崎の市民団体などが主導する実行委員会の主催。「フクシマを忘れない、繰り返させない特別アピール」も採択した。(金崎由美)

【解説】各地の被曝に目を

 不要な被曝を強いられ、健康で平穏な生活や地域の営みが奪われる。その被害が顧みられることはない―。被爆地広島で開かれた世界核被害者フォーラムは、人間的に生きるという根本的な権利を脅かされている各地の実態に光を当てた。

 インドのウラン鉱山、英国が核実験をしたオーストラリア、原発事故が起きた福島…。「核」が兵器用でも原発用でも、被曝という理不尽さは共通だった。しかも現状を放置するほど新たな被害者が生み出されていく。世界のどこに住んでいてもひとごとではない。

 壁は高い。地道でも、当事者の声を束にして広く、深く届けていくしかない。

 草の根で活動をする市民が集い、試行錯誤しながらフォーラム開催にこぎ着けた。一度だけのイベントで終わらせることなく、何らかの形で「ヒバクシャなき世界」を求めるネットワークにつなげなければならない。被爆70年、広島と長崎こそ、各地の被曝に一層目を向けたい。(金崎由美)

(2015年11月24日朝刊掲載)

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