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「原爆被害 伝える好機」 米英仏外相 平和公園訪問 被爆者ら 核廃絶へ注文も

 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先立つ外相会合出席のため、来年4月に広島市を訪れる米国など核兵器保有3カ国の外相が平和記念公園(中区)を訪問することが分かった25日、広島の被爆者たちは「被爆地に来るからには当然だ」と受け止め、早く核兵器を廃絶する具体的な行動につなげるよう期待した。(水川恭輔)

 「保有国の政策責任者に原爆被害の特質を伝える絶好のチャンスだ」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(73)は米国、英国、フランスの外相が公園を訪れるのを歓迎する。「原爆慰霊碑への献花や原爆資料館の見学に十分時間を割き、理解を深めてほしい」

 市で2008年にあった主要国(当時G8)下院議長会議(議長サミット)では、米英仏とロシアの議長らが慰霊碑前で手をつなぐ象徴的な場面があった。市はことし6月に外相会合開催が決定後、資料館見学、被爆証言も含め、核兵器の被害に触れるよう外務省に提案してきた。

 訪問を呼び掛けた日本政府としては、外相会合で環境整備を図り、来年5月の伊勢志摩サミットに合わせたオバマ米大統領らの訪問を後押ししたい考えだ。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(71)は「核兵器廃絶への行動につなげないと意味がない」と注文。国際情勢が不安定になっているとし、「保有国が核兵器を使うのではとの危惧が膨らんでいる。外相たちの責任は重い」と言う。

 ただ、今月の国連総会第1委員会(軍縮)では、為政者らの被爆地訪問を促す日本主導の核兵器廃絶決議案の採決を3カ国は棄権した。非人道性の議論の高まりへの警戒があるとみられる。広島平和文化センターの小溝泰義理事長は「こんな時だからこそ、被爆地の被害を知ってもらうのは重要なステップになりうる。『核兵器のない世界』への動機付けとなり、核抑止に頼らない安全保障や核軍縮の議論を促進できるよう受け入れ側も努力したい」と話した。

(2015年11月26日朝刊掲載)

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