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広島市内目撃 最多45件 米軍低空飛行 本年度 訓練空域近道か

 広島市内で本年度に目撃された米軍機とみられる低空飛行は45件に上り、調査を始めた1997年度以降の年間数で既に最多となったことが、広島県と広島市への取材で分かった。6、7月に西区や佐伯区で目撃情報が相次いだ。米海兵隊岩国基地(岩国市)の米軍機の飛行ルートが変化しているとの指摘もある。県は近く、日米両政府に低空飛行訓練の中止などをあらためて要請する。(松本恭治、野田華奈子)

 広島市での低空飛行の目撃はこれまで、2007年度の43件が最多だった。県と市によると、4、5月に目撃はなかったが、6月に西区や南区などの住民から13件の情報が市に寄せられた。7月は佐伯区で28件が集中した。10、11月にも計4件の目撃があった。

 広島市での目撃情報は昨年度は9件。08年度以降、10年度の11件、12年度の28件を除き1桁台だった。基地問題に詳しい元愛媛大教授の本田博利さん(67)=廿日市市=は「さまざまな地形や状況を想定し、飛行ルートが変わってきていると考えられる。岩国基地に米空母艦載機が移転されればさらにルートは広がり、広島市内を飛ぶケースも増えるだろう」と指摘する。

 市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する県西部住民の会」の坂本千尋事務局長(62)=廿日市市=は「(中国山地を横断する訓練空域の)ブラウンルートに向かう近道として、広島市上空を飛行しているのではないか。編隊で飛び大きな爆音が響くケースも増えている」とみる。

 一方、広島県国際課は「中国四国防衛局に照会しても詳細は明らかにされない」と困惑する。

 県内での15年度上半期(4~9月)の目撃は730件。昨年度上半期より108件増え、97年度以降で3番目に多い。情報は広島市をはじめ、県北や県西部を中心に9市町の住民から寄せられた。最多は北広島町の428件で、全体の6割近くを占める。

 日米合意で「必要不可欠なものに限る」とされている土日祝日の目撃件数は18件だった。午後7時から翌午前7時までの夜間・早朝時間帯も75件。目撃の実日数は97日だった。

 岩国基地の南に位置する柳井市でも、米軍機とみられる騒音の苦情が市に相次いでいる。本年度は10月末時点で81件に上り、昨年度1年間の7件から急増した。市は今月30日、同市日積地区へ独自に騒音測定器を設置。1日から調査を始める。

≪2015年度上半期の市町別の目撃状況≫

市町    目撃件数(14年度同期)
北広島町  428(366)
安芸太田町 113( 72)
廿日市市  107(145)
広島市    41(  0)
三次市    19( 13)
庄原市    10( 14)
江田島市    8(  3)
大竹市     3(  8)
安芸高田市   1(  1)
合計    730(622)

(2015年12月1日朝刊掲載)

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