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社説・コラム

『想』 ジェームス・ジョーセフ もっと海外に出よう

 「インド」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろう。カレー、暑い、貧困層が多い―といったところか。しかし、これだけでは、「インドを知っている」とはいえない。私も、母国のネルー大で日本語を専門的に学んでいたが、初めて日本に来た時、自分が日本について何も知っていないことに驚いた。

 空港に降り立って、外に出たら、すぐにその国の「におい」がする。風景、音、感触…。五感で得るものは、映像で見るものとはまったく違う。残念ながら、日本でのインドの認知度はまだまだ低い。テレビ、新聞のニュースだけでは、生活ぶりや雰囲気まで伝わってこない。

 広島の若者にインドをもっと知ってもらおうと、8月、スタディーツアーを主催した。私とともに、広島の10、20代の4人が参加し、南部のバンガロール市に滞在した。学校を訪れて原爆展をしたり、ホームステイしたりして、異文化を体験した。

 同行した私は、90%以上の場面で通訳をしなかった。単語だけでもいい。まず自分の英語で話してもらう。お互いそうすることで親近感がわき、通じ合えば自信が持てる。「同年代の子とは国や肌の色、言葉が違っても考えること、感じることが似ていた」。そんな感想を参加者から聞き、成功したと思った。

 異文化が共存できる社会づくりを手伝いたい。彼らの経験は、すぐに結果を出すわけではない。木を育てるのと同じ。10年、20年後、実を結ぶ。重要なのは、インドについて自分が感じたことを人に伝えていくことだ。魅力を他人と共有できれば、国際化する準備になる。

 「国際平和都市」広島。インドでも関心が高い。私も住み始めて23年がたつ。海外における「ヒロシマ」の言葉のもつ優位性を、市民はどれだけ感じているのだろう。

 戦争の悲惨さを歴史から学び核兵器は人類を滅ぼすというヒロシマの教訓を伝えないといけない。広島の人はもっと海外に出て対話してほしい。相手を理解することは、戦争を防ぐ手だてになる。(インドチャイ倶楽部(くらぶ)ひろしま代表)

(2015年12月2日セレクト掲載)

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