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営みの痕跡に注目 原爆資料館耐震補強に伴う発掘調査 旧広島城下の成り立ちに光も

 原爆資料館本館(広島市中区)の耐震補強工事に伴う発掘調査が11月20日から始まり、被爆瓦とみられる破片などが徐々に出土している。発掘は1955年の開館後初めてで、市が来年3月まで続ける。爆心地の南西約400メートル。原爆投下で壊滅した中島地区の町並み跡とともに、デルタに広がっていた旧広島城下の成り立ちにも光が当たる可能性がある。(林淳一郎)

 市平和推進課と市文化財団によると、これまでに変形した瓦片のほか、陶器やガラスの破片が見つかっている。発掘面積は高床式の本館直下とその外周の計2200平方メートル。作業員約20人態勢で東側から順次、最大で深さ約1・5メートルまで掘り下げて調べる。

 一帯には被爆前、民家や銭湯、理髪店、米穀店、幼稚園などがあったとみられる。市が昨年3月とことし5月、3カ所計約30平方メートルを試掘した際、町並みの縁石などを確認したという。

 同じ平和記念公園内では2000年1~3月、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館の建設に伴う調査例がある。爆心地の南西約200メートル。原爆の熱線で溶けたガラス瓶や瓦、古井戸、病院の基礎部分、子どもの靴跡が残るコンクリートの側溝などが見つかり、4千点余の出土品は原爆資料館に収められた。江戸―昭和初期の地層も見られた。

 今回の耐震補強工事は本館直下の土を取り除いて進めるため、調査範囲では被爆前後の地層が全て失われてしまう。出土した資料は保管して来年度、報告書にまとめる計画だ。市文化財団文化財課は「被爆の状況をしっかり確認し、さらにさかのぼる時代の営みの痕跡も見つかれば記録に残していきたい」としている。

(2015年12月3日朝刊掲載)

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