×

ニュース

金総書記死去 ヒロシマにも波紋 被爆者「変化」に期待

 核兵器開発を進め、2度の核実験を強行した北朝鮮の金正日総書記の死去を受け、被爆地広島では19日、核開発問題の行方や在朝被爆者支援の今後がどうなるのか、被爆者や行政トップたちに波紋が広がった。(金崎由美、田中美千子、馬上稔子)

 広島県被団協の坪井直理事長(86)は「北朝鮮が簡単に政策を変えるとは思わないが、被爆地の声に少しは耳を傾けるようになるかも」と望みをつなぐ。もう一つの県被団協の金子一士理事長(86)は「核開発を外交の取引材料にした金総書記の路線を後継者は踏襲しないで」と訴える。

 在朝被爆者の健康診断を目指し10月に訪朝しながら、北朝鮮側の事情で実現しなかった広島県医師会の碓井静照会長(74)は「驚いているが、今後も健診実現へ協力を働きかけることに変わりはない」と冷静に受け止める。

 県朝鮮人被爆者協議会の李実根(リシルグン)会長(82)は「最近の報道で体が弱っているようには見えたが。日本政府の被爆者援護が届かない在朝被爆者の問題や核問題は次の指導者へ引き継がれる。まずは日朝国交正常化が必須だ」と両政府に対応を求める。  一方、広島市の松井一実市長は会見で「北朝鮮の国のありようがどうなるかを見定めたい」と慎重に言葉を選んだ。広島県の湯崎英彦知事も記者団に「推移を見守る」と述べるにとどめた。

 北朝鮮政治が専門の広島市立大広島平和研究所の金聖哲(キムスンチュル)教授は「短期的には内政が不安定になり、核問題を話し合う6カ国協議の再開は遠のく。ただ世代交代はチャンス。日本政府は被爆地の思いをくみ、中国などと連携して対話につなげる努力を」と求める。

(2011年12月20日朝刊掲載)

年別アーカイブ