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「韓国のヒロシマ」陜川郡に原爆資料館 初の公設 17年完成

 韓国慶尚南道の陜川郡は来年、原爆被害資料館の建設に着手する。郡トップで被爆2世の河敞喚(ハ・チャンファン)郡守(66)が8日、概要を明らかにした。戦後に広島から帰国した被爆者が多く住む「韓国のヒロシマ」で、あの日の記憶を伝え、発信する。原爆に特化した公設資料館は韓国内で初めてという。 (陜川(ハプチョン)郡(韓国)発 水川恭輔)

 陜川郡は韓国南部の釜山市から車で2時間半ほどの山あいにあり、人口約5万人。日本の植民地時代、貧困に苦しんだ多くの人が生活のため、同郷者を頼って広島に渡り、被爆した。韓国原爆被害者協会に現在登録している約2600人のうち約420人が暮らす。

 郡の計画では、被爆者約100人が入所している大韓赤十字社運営の養護施設「陜川原爆被害者福祉会館」隣の約1500平方メートルに建設。被爆の惨状の写真や放射線被害の説明板を並べる。敷地内に原爆犠牲者の慰霊塔も建立する。事業費21億ウォン(約2億1千万円)のうち7割は国の補助で、残りを道と郡が折半。近く設計を始め、2017年6月の完成を目指す。郡担当者らは展示の参考にするため広島市の原爆資料館の視察を検討している。

 郡によると、原爆被害をめぐる公設の展示、追悼施設は韓国にない。郡は近年、韓国原爆被害者協会陜川支部から建設の要望を受け、国や道に実現を働き掛けていたという。

 河郡守は両親が広島で被爆。いとこは原爆死した。「原爆で家族を失い、帰国後も大変な生活を送った韓国の被爆者の存在があまり知られていない。広く伝えたい」と話している。

(2015年12月9日朝刊掲載)

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