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原告「苦難 耳傾けて」 黒い雨訴訟 広島地裁で第1回弁論 市・県、請求棄却訴え

 広島の原爆投下後に降った放射性降下物を含む「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたのに被爆者健康手帳などの交付申請を却下したのは違法として、広島市や広島県安芸太田町などに住む70~90歳代の男女計64人が、市と県の却下処分の取り消しを求めた訴訟の第1回口頭弁論が9日、広島地裁であった。市と県はともに請求の棄却を求めた。

 高野正明原告団長(77)=佐伯区=が意見陳述。黒い雨を浴び、下痢や発熱など経験した健康被害を明かした上で、「原告の黒い雨を浴びた状況、その後の健康悪化による苦難の生活歴に耳を傾けてほしい」と訴えた。

 訴状によると、黒い雨の被害を受けた原告は「身体に原爆の放射能の影響を受けるような事情の下にあった」と定めた被爆者援護法の「3号被爆」に当たると主張。被爆者健康手帳の交付申請の却下処分を取り消すべきだとしている。「対象区域の指定が狭すぎ、著しい不平等を招いている」として、第1種健康診断受診者証の取得申請の却下取り消しも求めている。

 黒い雨の援護を巡り、国は爆心地から市北西部にかけて大雨地域(長さ約19キロ、幅約11キロ)を援護対象区域に指定。区域内で雨を浴びた住民たちに第1種健康診断受診者証を交付し、無料の健康診断を実施するが、区域から外れれば援護はない。原告は国の援護対象拡大を目指しており事実上は国と争う集団訴訟となる。

 国も訴訟参加の意向を持っており、市と県は国の参加を待ち、詳しい主張については「追って明らかにする」としている。(浜村満大)

(2015年12月10日朝刊掲載)

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