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激動の家族史 幸せ問う 倉本聰舞台 来月から全国公演 

 脚本家の倉本聰が率いる演劇集団「富良野GROUP」が1月から、舞台「屋根」の全国公演を始める。大正から現代までの北海道を舞台に、激動の時代を生きた家族の歴史をたどり、本当の幸せとは何かを問い掛ける。倉本は「一家の長大な歴史に、われわれが失ったもの、捨ててきたものを描いた。僕自身の反省のドラマでもある」と語る。(余村泰樹)

 大正12(1923)年に富良野の小さな開拓小屋で新婚生活を始めた夫婦の一生を追う。子ども10人との貧しくとも幸せな暮らしは、太平洋戦争で一変。長男と次男は戦地に赴き、三男は徴兵を嫌がり自殺する。終戦後、貧困と節約の時代から豊かな消費の時代へ。世間の変化にあらがうかのように、夫婦は子どもたちの捨てた古着を裂いて縄をない始める。

 炭鉱労働者や離農者の家…。国の政策に翻弄(ほんろう)され、あるじを失った廃屋を多く見てきた倉本。朽ちた家で最後まで形を残すのが屋根だ。その下をのぞくと、かつてあった生活を感じた。そんな経験から、家族を常に見守ってきた屋根が語る物語の着想を得たという。

 戦争、徴兵、敗戦、復興、高度成長、バブル崩壊、IT革命…。「日本が一番変動した時代」を作品は切り取る。使い捨て文化の広がりや、親への恩を返そうとしない日本人の姿。「本当の幸せを忘れていないか」。仕事優先で、親を病院任せにしたわが身を顧みながら、問い掛ける。

 「屋根」は2001年に初演し、再演を重ねてきた。「筆が入れば入るほど良くなる」と倉本。09年以来となる公演に向け、東日本大震災や原発事故に思いをめぐらせる内容も盛り込むつもりだという。

 外は甘く、中身は苦い「糖衣錠」のような芝居を心掛けている倉本。「鑑賞中は大笑いして楽しみ、効いてくるジャブのように後からいろいろと考えてもらえれば」と期待する。

 中国地方の公演は次の通り。

 2月16日午後7時、広島市中区のJMSアステールプラザ=TSS事業部Tel082(253)1010▽3月7日午後7時、倉敷市芸文館=イオンモール岡山チケットセンターTel086(941)8818▽同9日午後7時、津山市の津山文化センター=同。

(2015年12月12日朝刊掲載)

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