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ドーム初の耐震工事 広島市開始 れんが壁3ヵ所補強

 広島市は14日、世界遺産の原爆ドーム(中区)で初の耐震補強工事を始めた。震度6弱で崩壊する危険性がある、れんが壁3カ所を内側から鋼材で支える。被爆の惨禍を無言のまま証言し続けて70年。尊厳性を保ちつつ、破壊された建物の地震対策を施す。いずれも内外の揺れに弱い、3階部分の北側2カ所と南側1カ所の壁が対象。過去のドーム保存工事で建てた支柱に鋼材(1・6~7・4メートル)を継ぎ足して固定する。

 この日は午前8時半から、市の委託業者約10人がドームの敷地を囲む鉄柵を撤去し、資材を搬入。がれきの上にプラスチック板を敷いて作業場所を確保した。工事の本格化に伴い、来年1月5日から3月下旬まで、足場や落下物を防ぐネットでドームを覆う。

 市は1967、89、2002年度の3回、鉄骨による補強など、保存のための工事をした。今回は耐震調査を経て、13年度に出た診断結果を踏まえる。専門家の一部には免震工法など大規模な対策を推す意見もあったが、外観に影響がなく、芸予地震で想定される震度6弱に耐え得る必要最小限の対策を採用した。

 名古屋市西区の主婦森野陽子さん(63)は観光で約30年ぶりに訪れたといい「想像以上に劣化していて驚いた。将来まで保存できるよう、しっかり補強してほしい」と願った。(和多正憲)

(2015年12月15日朝刊掲載)

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