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その時 互いの距離50メートル 記事きっかけ 被爆の2人 対面が実現

 広島に原爆が落とされた時、50メートル程度しか離れていない広島市千田町3丁目(現中区千田町3丁目)で被爆した90歳と86歳の男性が、中国新聞の記事をきっかけに対面し、当時を懐かしむとともに、二度と戦争をしてはいけないとの思いを語り合った。

 11月10日朝刊「平和」のページに被爆証言が載った正岡博さん(90)=広島市東区=と、それを読んだ郷田正巳さん(86)=東京都三鷹市。郷田さんが広島市を訪れる時に「ぜひ会いたい」と望み、広島市南区のホテルでの対面が実現した。

 正岡さんは広島工業専門学校(現広島大工学部)の校舎内、郷田さんは同校の西隣、県立広島工業学校(現県立広島工高)の北にあった伯父の家で被爆した。持参した当時の地図を見ながら、それぞれ場所を確認。「わずか50メートルくらいしか離れてないですね」「今は、公園になっていて当時の面影が全然なくなっている」などと話した。

 1938年4月に広島一中(現国泰寺高)に入学した正岡さんは在学中、駅伝選手として活躍。郷田さんが広島商業学校(現県立広島商業高)に入学した42年ごろは戦時色が濃くなり、野球の全国大会が中止に。仕方なく剣道部に入ったことなど「4年の違いは大きい。戦争でやりたいことができんかった」と、うなずき合い、二度と戦争が起きないよう願った。

 「こんなに近くで原爆に遭い70年後の今、その話ができるなんて感慨深い。一晩中でも話していたい」。来夏も広島を訪れる郷田さんが再会を提案すると、正岡さんも「ぜひ、そうしましょう」と応じ、握手で別れた。(二井理江)

(2015年12月15日朝刊掲載)

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