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社説・コラム

天風録 「アーケード曲がり角」

 周南はイチョウ並木が美しい街だ。銀座という場所より北にあるのに、その商店街を「銀南街」と呼ぶのを最初は疑問に思ったが由来を聞いて納得した。もとは「銀杏(ぎんなん)街」だったとされる▲商店街が集中するJR徳山駅前。核となるビルが完成して50年となる銀南街は、山口県内で初めてアーケードが架かる。しかし中央を除いた東西の部分が老朽化のため、ついに撤去された。確かに雨漏りもひどかった▲「商店街の象徴」は全国的に曲がり角を迎えている。郊外店の進出などで苦戦と言われて久しい。古くなるアーケードの維持も負担と聞く。国の商店街まちづくり事業の補助対象で見れば、撤去は2年間で70件を超す▲日本では1923年に東京の帝国ホテルに誕生したショッピングアーケードが元祖という。今の形で各地の商店街に広がったのは戦後のこと。まさに復興の過程とも重なり合っていよう▲子どものころ「街に行く」とは広島の本通りアーケードを指した。原爆を乗り越えて今もにぎわう。ただ改修の折に見上げ、違った風景に驚いたことも思い出す。確かに青空の下の明るい銀南街を歩くだけで、意外と気持ちいい。この開放感を生かす手はないか。

(2015年12月18日朝刊掲載)

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