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研究者が見る原発と原爆 広島大付属高で特別講義 放射能汚染・開発史を解説

 広島大付属高(広島市南区)は、科学者と歴史学者の視点から「原発と原爆」を考える特別講義を開いた。文部科学省が指定するスーパーサイエンスハイスクールのプログラムの一環で、科学をめぐる倫理観の育成がテーマ。研究者としての在り方や、視野を広げる重要性を学んだ。

 講堂での講義に1、2年生合わせて約400人が参加。福島第1原発事故後に住民とともに放射能汚染地図づくりを進める木村真三・独協医科大准教授(放射線衛生学)と、大気圏核実験による世界的な放射能汚染を研究する樋口敏広・京都大助教(環境史)の話に耳を傾けた。

 木村准教授は、国や自治体が来春の帰還を目指している地区の住民と交流。詳細なデータを伝えつつ、自らの判断で帰還の可否を決めるよう呼び掛けていることを紹介し、「科学を掲げる者が、市民を惑わし、事実を曲解してはならない」と強調した。

 樋口助教は、原爆や原発の開発史を解説。核兵器や原発の賛否をめぐり対照的な生き方をした国内外の科学者を例示し、「彼らの苦悩と模索から学ぶことが大切。過去を知るのは、未来を変えるヒントを得るためだ」と説明した。

 生徒からは「福島の事故で、がんなどのリスクは最終的にどこまで広がると思うか」などと質問が相次いだ。木村准教授は「科学は、おごり高ぶってはいけない。固定観念に陥らず、分からないことは分からないと受け止めて研究すべきだ」と述べた。(藤村潤平)

(2015年12月22日朝刊掲載)

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