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社説・コラム

『潮流』 クリスマスと憲法

■論説委員・高橋清子

 スイーツを食べて楽しむだけではない。憲法の意義を学ぶクリスマス会が、広島市内であった。乳幼児を連れた母親や年配の市民がサンタクロース姿の弁護士の解説にうなずき、合いの手を入れる。

 安全保障関連法の成立から3カ月が過ぎ、施行も迫る。参加者の関心は廃案の手だてに集まった。

 「選挙で意思を示して変える」「関心を持つ市民を増やしていく小さな積み重ねが大事だ」「違憲審査のできる具体的な事件とは何だろう」。自分たちに実際何ができるか、思い思いに問い掛けていた。

 安保法の国会審議を機に主権者として危機を感じた人は少なくない。大半の法律家が「違憲」とし、過半数の国民が反対するのを尻目に現政権は強引に成立させた。憲法によって国家権力に歯止めをかけ、個人の権利を守っていく立憲主義が揺らいでいると思う。

 会は、抗議デモをきっかけに誕生した「安保関連法案に反対するママの会・広島」などが企画した。「政府にも市民にも、この問題を忘れさせてはいけない」とメンバーは言う。憲法を考える輪を広げていく、敷居の低いイベントを月1回ずつ開くという。

 憲法12条の条文が頭に浮かんでくる。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」。この夏、デモに加わった若者たちからは、この「不断の努力」こそがキーワードだという声を何度か聞いた。憲法を読み直す中で、とりわけ気になっている。

 国家や政治を見張る努力を怠れば、自らの自由も権利も守れないという警告ともいえよう。選挙の低投票率を考えると心もとない。憲法公布から来年で70年。イルミネーション輝く平和大通りを歩きながら、平穏なクリスマスを迎えることの大切さを思った。

(2015年12月26日朝刊掲載)

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