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米、3度目の新型核実験 昨夏ごろ 研究所の装置で

 米エネルギー省傘下の国家核安全保障局(NNSA)が2011年7~9月の間に、プルトニウムは使うものの核実験場は必要としない新たなタイプの核実験をニューメキシコ州のサンディア国立研究所で実施していたことが5日、分かった。新型の核実験は10年11月と11年3月に続き3回目。オバマ大統領が唱える「核兵器なき世界」が遠のいているとの批判は免れない。

 NNSAが報告書「備蓄核兵器管理計画(SSP)として実施された諸実験」の中で明らかにした。オバマ政権はこれで、臨界前核実験と新型の核実験を3回ずつ行ったことになる。同研究所はホームページ(HP)で実験を「爆発を伴う核実験はせずに、備蓄核の安全性や有効性を維持するため」と説明する。

 同研究所のHPや2012会計年度の同省予算教書などによると実験は「Zマシン」という装置で実施。世界で最も強いエックス線を発生させて地球の中心部以上に超高圧、超高温という核爆発の瞬間と似た状態を再現し、プルトニウムの反応を調べるという。使用するプルトニウムは8・4グラム未満と少量なのが特徴。

 オバマ政権はクリントン、ブッシュ両政権の方針を引き継ぎ、SSPに基づくさまざまな実験や研究をしている。集めたデータは爆発を伴う核実験をスーパーコンピューターでシミュレーションするのに活用される。

 米国は爆発を伴う核実験を1992年までに千回以上実施。97年からはプルトニウムに高性能火薬で衝撃を与え、核爆発に至る前段階での反応を調べる臨界前核実験をネバダ核実験場の地下施設で26回行っている。Zマシンでの実験は臨界前核実験を補完するとされる。(金崎由美)

(2012年1月6日朝刊掲載)

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