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島根2号機の審査停滞 規制委に申請2年 宍道断層で分かれる見解

 中国電力が島根原発2号機(松江市)の再稼働に必要な審査を原子力規制委員会に申請し、25日で2年が過ぎた。中電が採用する沸騰水型の原発でも審査が本格化する中、規制委は東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の審査を優先。島根2号機の審査では、原発近くの宍道断層の長さをめぐり中電と規制委の見解が分かれたままだ。再稼働の行方は見通せない。

 16日、東京での規制委の審査会合。「納得できない」「胸を張って言い切れますか」。2号機を審査する規制委側から中電に厳しい指摘が飛んだ。議論になったのは、原発近くを東西に走る宍道断層。中電が主張してきた長さ22キロは、またも認められなかった。

2度の追加調査

 中電はこの2年で宍道断層を2度、追加調査した。断層の長さは、起き得る地震の揺れの強さを決め、原発の耐震設計に大きく影響する。審査会合に出席していた中電の担当者は「これ以上のデータを、この場で示すことができない」と険しい表情を見せた。

 この状況を受け、中電は断層が追加調査の対象だった西端に3キロほど延びて長さが25キロでも、地震に耐えられる原発設備にする検討を始めた。耐震設計の目安「基準地震動」を引き上げれば、追加の耐震工事が必要になる可能性がある。

 8月に再稼働した九州電力川内原発1号機など、規制委が新規制基準への適合を認めたのは、いずれも加圧水型の原発だ。東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型の審査は後回しにされていた。

 ことしに入り、沸騰水型の審査も加速。島根2号機も前半は週1、2回ペースで会合があり、既に累計で69回を重ねた。しかし、8月からは原子炉建屋など設備面の審査が止まった。規制委が沸騰水型では審査の準備が進んでいるとして、柏崎刈羽6、7号機を集中審査する方針を示したからだ。中電のある幹部は「突然に決まった。しっかり審査を受けていくということしかない」と漏らした。

説明済み2項目

 中電が想定する島根2号機の審査対象29項目のうち、説明し終えたとするのは敷地内と周辺の地下構造と、どこでも起こり得る地震動の想定の地震関連2項目。火災や竜巻など21項目が審査に入ったが、津波や保安電源設備など6項目は議論に入れていない。

 既に進めている安全対策工事も順調とはいえない。沸騰水型に義務付けられたフィルター付き排気(ベント)設備は規制委に追加工事を求められ、完成が遅れる。安全対策費は約4千億円と申請時の4倍に膨らんだ。中電の役員は島根2号機の審査を「時間的に言うとまだ道半ばまで来ているかどうかの段階」と明かす。

 さらに、島根原発の低レベル放射性廃棄物の処理をめぐる虚偽記録問題が6月に発覚したことも影を落とす。規制委の田中俊一委員長は会見で「比較的軽微なこと」と話した。だが、地元の受け止めは大きく異なる。島根県の溝口善兵衛知事は「(再稼働に)当然、影響はある」と強調する。(河野揚、山本和明、秋吉正哉)

<島根原発をめぐる主な動き>

2011年 3月 東京電力福島第1原発事故が発生
  12年 1月 2号機が定期検査に入り、運転停止。島根原発の稼働がゼロ
         になる
      9月 原子力規制委員会が発足
  13年 7月 新規制基準が施行
     12月 中国電力が2号機の適合性審査を申請
  14年 3月 安全対策費を1千億円以上から約2千億円に積み増し
      6月 宍道断層で1度目の追加調査
  15年 2月 宍道断層で2度目の追加調査
      6月 低レベル放射性廃棄物の処理をめぐる虚偽記録問題が発覚
      8月 2号機が規制委の集中審査の対象から外れ、設備関連の審査
         が止まる
     10月 安全対策費を約4千億円に積み増し

(2015年12月26日朝刊掲載)

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