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米新型核実験 昨年11月も実施 米機関「今年も継続」

 米国が2011年7~9月に3度目の新型核実験を実施していた問題で、米エネルギー省傘下の国家核安全保障局(NNSA)が同年11月にも同じニューメキシコ州のサンディア国立研究所で新型核実験を実施していたことが6日、分かった。

 NNSAの広報担当者が、中国新聞の取材にメールで回答した。「最後の実験が実施されたのは11月16日。12年に追加の実験をし、将来的にも実験を重ねる」としている。

 実験の目的を「プルトニウムの高圧下での反応を調べるため」と説明。「(爆発を伴う)核実験を行わずに備蓄核の安全性を維持することができる」と新型実験の実施を正当化している。11月の実験で計4度になるのかは言及がなかった。

 同研究所のホームページなどによると、実験は核実験場を必要とせず、「Zマシン」という装置で実施。世界で最も強いエックス線を発生させて核爆発の瞬間と似た状態を再現し、核兵器の材料となるプルトニウムの反応を調べるという。(金崎由美)

米新型核実験 米に抗議考えず 官房長官

 藤村修官房長官は6日の記者会見で、昨年夏ごろに新タイプの核実験を実施していた米国に対し、抗議しない考えを表明した。

 藤村氏は「貯蔵する核兵器の安全性、有効性維持のため実験をしたと承知している」と説明。核爆発を伴わず、包括的核実験禁止条約(CTBT)に反しないとし、「抗議や申し入れは全く考えていない」と述べた。

 抗議しないなら実験の「容認」になるのではないかとの質問に対しても、「CTBTにおける禁止事項では全くないということだ」と繰り返した。(岡田浩平)

<解説> 核抑止力の維持 背景に

 「核兵器なき世界」を掲げるオバマ政権下で核実験が続くのは、大統領が一方で核抑止力は堅持すると明言していることと大いに関係する。原爆投下正当論が根強い米国で核兵器保有を肯定する声は強い。今後も核実験が繰り返されるのは確実と言わざるを得ない。

 今回の新型核実験や臨界前核実験は米国が膨大な予算を費やし核兵器の性能を維持する「備蓄核兵器管理計画」に基づき実施された。核兵器を抱え続ける限りさまざまな保守、点検が必要で、核実験はその一環にすぎない、との立場だ。

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長は「強大な軍需産業はオバマ政権に反発を覚えながらも『実』は取っている。オバマ政権になってから核兵器関連予算は増えている。『核兵器なき世界』をオバマ氏個人が掲げようとも、核兵器の性能向上が行われる根深い構造が米国にはある」と指摘する。

 今秋に大統領選を控え、支持率の低迷するオバマ氏が国内保守派の反発を招いてまで核兵器の性能維持に不可欠とする核実験を止めるとは考えづらい。

 米国防総省は5日に発表した新たな国防戦略で「核兵器が存在する限り安全で効果的な核抑止力を維持する」と明示。理由に「同盟国に安全保障上の関与を保障する」ことを掲げる。

 その同盟国である日本政府は今回も抗議しなかった。唯一の被爆国の看板を掲げながら「核の傘」に頼り、核実験を黙認する政府の二枚舌に、被爆者の失望は大きい。

 核兵器保有国だけでなく、被爆国の政府にも「核兵器なき世界」を実現する気があるのか、被爆地から訴え、問い続けるしかない。(金崎由美)

(2012年1月7日朝刊掲載)

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