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印への核輸出承認 ヒロシマに失望と怒り

■記者 城戸収

 日本を含めた原子力供給国グループ(NSG)が、米印原子力協力協定を承認したことに対し、被爆地・広島の被爆者団体や平和団体は7日、失望や怒りの声を上げた。核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドへの原子力技術、核燃料の輸出を可能にする点を問題視、「NPT体制形骸(けいがい)化を招く」「被爆国として反対すべきだった」とNSGや日本政府への批判を強めた。

 広島県被団協(坪井直理事長)の木谷光太事務局長は「NPT体制が崩壊しかねない状況に、被爆国の自覚を持って反対してほしかった」と指摘。もう一つの県被団協の金子一士理事長も「唯一の被爆国として主導的な役割が求められていただけに情けない」と悔しがっていた。

 市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表は「核軍縮・核不拡散に対する各国の懸念の声に、インドが核実験の一時停止を表明したとしても何の保障もない。米国の世論が危機感を持ってもらうよう働き掛けたい」と話していた。

 広島市の秋葉忠利市長は「人類の未来に責任を持つべき立場にある国々が全会一致で承認したことは、失望以外の何ものでもない」とコメント。広島県の藤田雄山知事は「極めて遺憾。政府には、このような判断に至った理由を国民に説明する責任がある」と強調した。

 NSGは日本など45カ国で構成、指針で国際原子力機関(IAEA)の包括的保障措置(査察)協定適用を求めている。査察協定を結んでいないインドと、米国の協定発効には、NSGの承認が最大の関門になると見られていた。

(2008年9月8日朝刊掲載)


米印核協定承認 被爆者ら抗議の座り込み 広島

■記者 城戸収、岩成俊策

 米印原子力協力協定をNSGが承認したことに対し、被爆地の広島市では、8日も抗議行動が相次いだ。

 中区の原爆慰霊碑前では、広島県原水協と広島県被団協(金子一士理事長)の座り込みに約60人が参加。正午すぎから、黙とうに続き、抗議の横断幕を掲げて約30分間座り込んだ。

 金子理事長はあいさつで、NPT未加盟国インドへの原子力技術や核燃料輸出を可能にする決定について「NPT体制は意味を失う」と危機感を示した。さらにNSGに日本も加わっている点を問題視し、「被爆国が核拡散を進めるような現状を許すわけにはいかない」と語気を強めた。

 両団体は首相官邸と米国、インドの各在日大使館に抗議文をファクスした。

 広島県原水禁と広島県平和運動センターも首相官邸と外務省に抗議文をファクス。「NPT体制崩壊につながる。加担した日本政府の責任は重大」とし、国際社会で核廃絶に向け主導的役割を果たすことを求めた。

 日本被団協や核兵器廃絶をめざすヒロシマの会など全国13の被爆者・平和団体も日本政府に説明を求める共同声明をまとめた。9日に福田康夫首相らに提出する。

(2008年9月9日朝刊掲載)

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