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連載・特集

ヒロシマの記録2015 7~12月 安保法制 疑問が噴出

7月

 1日 被爆者の平均年齢が3月末時点で80・13歳となり初めて80歳を超えたと、厚生労働省の全国まとめで判明。被爆者健康手帳の所持者数は18万3519人

 3日 浄土真宗本願寺派安芸教区と本願寺広島別院が広島市の平和記念公園にある原爆供養塔前で「平和を願う法要」を営み、宗派トップの大谷光淳門主が導師を務める▽広島県議会が核兵器廃絶と恒久平和を求める決議

 5日 カザフスタンが91年末のソ連崩壊で世界第4位の核保有国となった際、リビアの最高指導者カダフィ大佐から「イスラムの核」として核兵器を共同保有する提案を受けていたと、中国新聞で報道。欧米ににらみを利かせる狙いだったとみられるが、カザフが同意せず核を放棄

 9日 広島地方気象台が、原爆が投下された日の当番日誌や、柳田邦男さんの「空白の天気図」の由来となった天気図を広島市に寄贈▽広島市が原爆供養塔の地下納骨室を報道陣に公開。7万人の遺骨を安置した状態では20年ぶり 14日 欧米など6カ国とイランが、イラン核問題の外交解決に向け最終合意したと発表。ウラン濃縮などのイランの核開発活動を10~15年制限、徹底した監視下に置き、欧米側が経済制裁を解除するのが柱で、核兵器保有阻止に道筋をつける歴史的な成果

16日 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が衆院本会議で可決▽英国の国会議事堂と広島市の原爆資料館をインターネット電話でつなぎ、被爆者の梶本淑子さんが被爆体験を証言▽庄原市西城町の被爆者でつくる西城町原爆被爆者友の会が解散▽米ニューメキシコ州アラモゴード郊外での人類初の核実験から70年。関連の博物館があるロスアラモスで実験を肯定的に捉えるイベント

19日 中国新聞社が、各都道府県と中国地方5県内の被爆者団体に活動方針を尋ねたアンケートの結果を報道。121団体のうち43団体が被爆者がいなくなれば解散する可能性を示唆。49団体は今後も2世や遺族による組織の存続を希望した

21日 閣議で報告された防衛白書で日本を射程内に入れる北朝鮮の核搭載ミサイル配備のリスク増大を明記

23日 詩人峠三吉の直筆原稿などの資料をおいの峠鷹志さんが広島文学資料保全の会に預ける

28日 広島県朝鮮人被爆者協議会が結成40年記念式典を広島市で開く

29日 東京の被爆者団体「東友会」が、都内在住の被爆2世の健康などに関する実態調査をまとめた報告書を公表。6割が不安を感じるなど、親の被爆による影響を懸念する

30日 英国のロックバンド「レッド・ツェッペリン」のギタリスト、ジミー・ペイジさんが広島市の平和記念公園を44年ぶりに訪問▽ボーイスカウトの国際大会「世界スカウトジャンボリー」(山口市)のピースプログラム開始。8月5日までに広島市の平和記念公園を150カ国・地域の計2万6千人が訪れる計画

8月

 1日 原水禁国民会議などの原水爆禁止世界大会が福島県いわき市の福島大会で開幕

 2日 米国人記者ジョン・ハーシーの被爆地ルポ「ヒロシマ」の自筆の初稿が米エール大図書館にあると中国新聞が報道▽日本原水協などの原水禁世界大会の開幕となる国際会議が広島市で始まる

 3日 戦争文学で知られた作家の阿川弘之氏が94歳で死去

 5日 日韓両国の大学生と駐広島韓国総領事館が、広島市の平和記念公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑のそばに日韓友好と平和を願って植樹▽広島市で連合が単独で平和集会を主催。原水禁国民会議、KAKKIN(旧核禁会議)の原発政策をめぐる路線対立が続き3年連続▽日本被団協が「被爆者と市民のつどい」を広島市で開催▽原爆胎内被爆者全国連絡会が広島市で初のシンポジウムを開く▽中谷元・防衛相が参院特別委員会で安全保障関連法案に基づく他国軍への後方支援をめぐり「核兵器の運搬も法文上は排除していない」と述べ、理論上は可能との見解を示す。非核三原則などを理由に「要請があっても拒否する」として実現性は強く否定▽広島市の中学3年19人が平和記念式典に出席する駐日大使たち23人に自作の平和メッセージを英語で伝える▽ロシア外務省が、広島、長崎への原爆投下後の45年9月に東京のソ連大使館が実施した現地調査の報告書を公開▽米爆撃機B29エノラ・ゲイ号の機長の同名の孫で「核の傘」の一翼を担う米空軍爆撃航空団の司令官ポール・ティベッツ准将が回答した書面インタビューの内容を中国新聞が報道。「祖父は大統領の命令遂行に全力を尽くしたと話していた」

 6日 戦争で初めて米国が広島に原爆を落としてから70年。広島市が平和記念公園で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営む。松井市長は平和宣言で核兵器廃絶へ「行動を始めるのは今」と訴える。被爆者や遺族、市民、市が招いた在外被爆者たち5万5千人が参列。過去最多の100カ国政府と欧州連合(EU)が代表を送り、米国はガテマラー国務次官とケネディ駐日大使▽安倍晋三首相が平和記念式典でのあいさつで国是の非核三原則に触れず。94年以降で初▽首相のあいさつ中、参列者から安全保障関連法案をめぐって「戦争法案反対」などのやじが飛ぶ▽広島市主催の「被爆者代表から要望を聞く会」で、首相が原爆症認定の審査期間を原則6カ月以内に迅速化したり、「黒い雨」被害の相談事業を強化したりする方針を表明。被爆者7団体は安全保障関連法案を「違憲立法であることは明白」と、撤回を迫る▽中国新聞が平和記念公園を訪れた100人にしたアンケートで、84人がオバマ米大統領の広島訪問を希望▽民主党の岡田克也代表が伊勢志摩サミットに合わせてオバマ米大統領が被爆地を訪問するよう各党や政府、地元と協力して取り組む考えを示す▽原水禁国民会議などと、日本原水協などの二つの原水禁世界大会が広島日程を締めくくる。核兵器廃絶とともに、「日本の戦争参加につながりかねない」などと安全保障関連法案の廃案を目指す文書をそれぞれ採択▽広島東洋カープの全員がマツダスタジアムでの阪神戦で背番号「86」の特別ユニホームを着用

 7日 アジア太平洋地域で核兵器削減を目指す国際有識者組織「核不拡散・核軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク」(APLN)の会議が広島市で2日間の日程で始まる▽ガテマラー米国務次官が東京都内で講演し、核兵器が70年間使われなかったことに関し「広島と長崎の被爆者が悲惨な体験を伝え、重要な役割を果たしてきた」

 8日 核兵器廃絶の道筋を探る円卓会議「ひろしまラウンドテーブル」が広島市で始まる。広島県主催で9日まであり、核兵器保有国を含む5カ国の外相経験者や研究者が参加

 9日 長崎の被爆70年。長崎市の平和公園で長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が営まれ、田上富久市長が平和宣言で、アジアの人々を苦しめた悲惨な戦争の記憶を語り継いでいくよう呼び掛ける。安倍首相はあいさつで非核三原則の堅持を明言

10日 廿日市市の市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」が6日に米軍機が県内を飛行したとして日米両政府に飛行中止を求める要請書を提出

11日 川内(せんだい)原発1号機が再稼働し、被爆者団体や広島県原水協、県原水禁などが平和記念公園の原爆慰霊碑前で相次ぎ座り込んで抗議する。日本被団協も即時中止を求める声明を発表

14日 政府が臨時閣議で戦後70年の安倍首相談話を決める。先の大戦をめぐり、歴代内閣が謝罪を続けてきたと紹介する形で「おわびの気持ち」を記述する一方、「戦争に関わりのない世代に、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とも強調

15日 終戦70年。全国戦没者追悼式に中国地方の遺族394人が参列▽平和を願う茶会が広島市の平和記念公園で営まれる

18日 高校生平和大使21人がスイス・ジュネーブの国連欧州本部を訪れ、広島県立広島高1年の井上つぐみさんがジュネーブ軍縮会議の本会議でスピーチ▽政府が持ち回り閣議で、安全保障関連法案に基づく他国軍支援の一環で、自衛隊が核兵器を輸送する可能性を「あり得ない」とする答弁書を決定。理由に「非核三原則の堅持」と、核兵器に関する高度な秘匿性や安全確保の必要性を挙げる

23日 「核兵器なき世界」の提唱者の一人、米国のウィリアム・ペリー元国防長官が広島市で講演。「核兵器がいかに悲惨か、理解されていないのが根本的な問題だ」として被爆地訪問の重要性を訴える

24日 包括的核実験禁止条約(CTBT)機構準備委員会の「賢人グループ」会合が広島市で始まる。4回目で日本では初めてで、ペリー元国防長官や英国のデス・ブラウン元国防相たち10人が出席

25日 CTBTの「賢人グループ」会合が条約の早期発効に向けた「広島宣言」を採択し閉幕。批准していない8カ国の指導者に多国間で働き掛けるよう提言する

26日 国連軍縮会議が広島市で始まる。23カ国と5国際機関から外交官や軍縮の専門家ら計83人が出席。広島開催は19年ぶり4回目▽国際原子力機関(IAEA)が北朝鮮の核問題報告書をまとめ、寧辺(ニョンビョン)の核施設で軽水炉の配電用とみられる施設を建設していると指摘

27日 IAEAとカザフスタンが国際管理下で低濃縮ウランを備蓄、供給する「核燃料バンク」の設立に関する合意署名式▽広島市が、原爆ドーム健全度調査の結果を公表。11年度の前回調査時から壁のひび割れなどが進むも「直ちに補修が必要ではない」

28日 国連軍縮会議が高校生や留学生を交えた特別会合を開き「核兵器なき世界」の実現に向けた若者の役割の重要性を確認。3日間の会期を終える

9月

 1日 平和首長会議に鳥取県日南町が加わり、中国地方の全107市町村が加盟

 8日 最高裁第3小法廷が、被爆者援護法に基づき、在外被爆者にも医療費の全額を支給すべきだとする初判断を示す。厚生労働省は判決を受けて運用を改め、約4200人全員を全額支給の対象にする方針を決定▽広島市での主要7カ国外相会合に向け広島県、市、広島商工会議所、県被団協(坪井直理事長)など官民18団体でつくる「G7広島外相会合支援推進協議会」が発足

12日 広島市立大が大学院に「平和学研究科」の新設を検討していることが判明

19日 安全保障関連法が参院本会議で可決、成立

24日 報道写真家の福島菊次郎(本名福島菊治郎)氏が94歳で死去

27日 東京都主催の「原爆犠牲者追悼のつどい」が葛飾区であり180人が参列

28日 国連総会のリュケトフト議長が一般討論演説で「あまりに多くの核弾頭が高度な警戒態勢に置かれ、偶発的な核戦争のリスクすら除去されていないことを想起すべきだ」と指摘

29日 原爆資料館の入館料を16年4月1日から大学生以上の大人で200円とする広島市の改正条例が市議会で成立。現行50円から値上げ

10月

 1日 広島市が「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い、健康不安を持つ市民向けに、自宅へ保健師を派遣する個別相談事業を始める

 2日 広島市の本川西岸の緑地にある市の公衆トイレが被爆建物に登録される。87件に

 5日 放射線影響研究所が、親の被爆と被爆2世の死亡との関連について追跡している疫学調査の結果を公表。09年末までの病死者では「がん」「がん以外の疾患」のいずれの死亡リスクも非被爆者の子どもと「有意な差は見られなかった」

 8日 「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い健康被害を受けたとして、広島市と広島県に被爆者健康手帳の交付を申請した71人の全員却下が判明

 9日 ノーベル平和賞が発表され、日本被団協や被爆者は選ばれず

11日 市民団体が企画した行事のうち、憲法・平和や原子力発電、安全保障をテーマにした催しの後援申請を中国地方の市が断った事例が11年度以降、少なくとも27件に上ったと中国新聞が調査報道▽16年のサミット開催地選考の際、米政府が広島市での開催に強い難色を日本側に示していたと判明

15日 川内原発2号機が再稼働▽在韓被爆者の団体が被爆証言や記録を集めユネスコ記憶遺産の登録を目指す運動を始めることが判明▽広島市が「ヒロシマ賞」の第10回受賞者にパレスチナ人の女性芸術家モナ・ハトゥムさんを選んだと発表

16日 安倍首相の妻昭恵さんが原爆慰霊碑に献花

24日 岡山県内の被爆者の子どもや孫たちでつくる「岡山被爆2世・3世の会」の結成総会

26日 愛媛県知事が伊方原発3号機の再稼働に同意表明▽厚労省が10年おきに全国で実施する「原爆被爆者実態調査」で、広島市が市内の被爆者1万6645人に宛てて調査票を発送

29日 54年3月に米国の水爆実験で被曝した第五福竜丸の放射性降下物「死の灰」を調べた物理学者西脇安氏が、直後に欧州各地でデータを発表し、原水爆禁止を訴えた様子を伝える資料が現存したと中国新聞が報道▽被爆者を原爆症と認めなかった国の処分取り消しを求めた訴訟で、東京地裁が東京、茨城、静岡3都県の17人全員を原爆症と認める。大阪高裁は14年に亡くなった大阪府の男性を原爆症と認めた一審判決を取り消し逆転敗訴とする

11月

 1日 核兵器廃絶を目指す科学者の国際組織パグウォッシュ会議の世界大会が長崎市で開幕。40カ国の科学者や軍縮担当者ら190人が参加

 2日 広島市が原爆資料館本館の敷地で初の大規模な発掘調査に着手

 4日 「黒い雨」に遭い健康被害を受けたのに被爆者健康手帳などの交付申請を却下したのは違法として、広島市などに住む70~90歳の男女計64人が市と広島県の却下処分の取り消しを求めて広島地裁に集団提訴。国の援護対象区域拡大を目指し、事実上は国との争い

 5日 パグウォッシュ会議の世界大会が核兵器の法的禁止を訴える「長崎宣言」を発表し閉幕

10日 米政府が、原爆開発を推進した「マンハッタン計画」の中心になったニューメキシコ州ロスアラモスなど全米3地域にある関連施設を「国立歴史公園」に正式指定▽平和首長会議が広島市で2日間開いた国内加盟都市会議で、行動計画に青少年交流など3件の新規・拡充策を盛り込むことを決め閉会

12日 平和首長会議がベルギー・イーペル市で理事会を開き、核兵器廃絶の行動指針「2020ビジョン」から核兵器禁止条約を締結する目標年「2015年」を削除

13日 原子力規制委員会が、高速増殖炉もんじゅ(福井県)の運転主体である日本原子力研究開発機構には適格性に重大な懸念があるとし、別の運転主体を見つけるよう文部科学相に勧告。見つけられなければ「施設の在り方を抜本的に見直す」よう求める

15日 公益財団法人ヒロシマ・ピース・センターが前広島市長の秋葉忠利氏に谷本清平和賞を贈る

16日 パリ同時多発テロを受け、平和首長会議がテロに抗議し、平和構築へ世界の連帯を呼び掛ける声明文を発表

17日 オーストリア・ウィーンの国連事務所に被爆資料が常設展示される

19日 広島県や広島市などでつくる放射線被曝者医療国際協力推進協議会(HICARE)が、会長に県医師会長の平松恵一氏を選んだと発表

20日 広島市が被爆建物レストハウスの改修計画素案を公表。前身の大正屋呉服店をイメージした内装を施し、繁華街だった一帯の歴史資料を展示する

23日 広島市での「世界核被害者フォーラム」が、放射線被害を強いられずに生きる権利の保障を明記した「世界核被害者の権利憲章要綱草案」を採択

25日 在外被爆者への医療費全額支給に向けた厚労省の新制度案の概要が判明。16年1月から全額支給する一方、民間保険なども支給対象にする従来の助成事業を限定的に残すことで利便性も維持

12月

 2日 IAEAがイラン核兵器開発疑惑の最終報告書をまとめる。イランが03年末まで核兵器の起爆装置開発を組織的にしていたとの認識を示す一方、09年以降は開発関連の活動の痕跡がないと認定

 3日 核兵器廃絶広島市議会議員連盟が発足

 7日 原爆ドーム世界遺産登録19年▽国連総会本会議が日本主導の核兵器廃絶決議案を賛成多数で採択。22年連続で、世界の指導者や若者の被爆地訪問を促す文言が入ったのは初めて。16年に核軍縮の作業部会を開く決議案も賛成多数で採択されたが、日本は棄権

 8日 パグウォッシュ会議が95年に受けたノーベル平和賞のメダルの複製の展示が原爆資料館で始まる▽韓国慶尚南道陜川(ハプチョン)郡の河敞喚(ハチャンファン)郡守が中国新聞のインタビューに応じ、16年着工、17年6月の完成を目指す原爆被害資料館の概要を語る

10日 原爆資料館に展示されていた原爆投下時刻の午前8時15分で止まった懐中時計の短針が折れていたと判明。経年劣化が原因とみられる

10日 ノーベル平和賞授賞式に、広島市の岡田恵美子さんと長崎市の築城昭平さんの2人の被爆者が来賓として出席

12日 安倍首相がインドでモディ首相と会談し、日本の原発輸出を可能にする原子力協定の締結に原則合意。締結すればNPT非加盟国とは初めて

14日 広島市が原爆ドームの初の耐震補強工事に着手。震度6弱で崩壊する危険性があるれんが壁3カ所を内側から鋼材で支える

15日 IAEAがイランの核兵器開発疑惑をめぐる特別理事会を開き、疑惑解明を終えると全会一致で決議▽広島マツダが、16年9月オープンへ改修中のビルの外壁の一部を「おりづるの壁」にする計画を表明

18日 広島市が、市内の被爆者13人の計42件約92万円分の医療費支給申請書を広島県へ提出せず、最長約7年にわたり放置していたと公表

22日 福井県知事が高浜原発3、4号機の再稼働に同意表明

24日 国の16年度当初予算案で、被爆建物保存支援の補助対象に広島市水道資料館と長崎市の旧城山国民学校の校舎が決まる

(2015年12月31日朝刊掲載)

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