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北朝鮮 なぜ核に頼る 被爆者、暴挙に怒り 広島知事・市長も抗議

 なぜ核の力にすがろうとするのか。北朝鮮による水爆実験実施の発表を受け、中国地方の被爆者や首長たちは6日、一様に憤った。一日も早く核兵器をなくして平和な世界を実現するよう国際社会に迫った。

 「谷底に突き落とされた気分だ」。広島県被団協の坪井直理事長(90)は声を震わせた。1996年と99年、原水禁などの訪朝団に加わり、現地で原爆展も開いた。「武力で得られる平和などありえない。目を覚ませ、と言いたい」と北朝鮮政府を厳しく非難した。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(71)も「過去3回の核実験への抗議を無視する行為だ。許せない」。二つの被団協などはそれぞれ7日に広島市中区の平和記念公園で抗議の座り込みをする構え。岡山県内の被爆者の子や孫たちでつくる「岡山被爆2世・3世の会」は、抗議文書を北朝鮮国連代表部に送った。

 ただ「核兵器なき世界」を阻むのは北朝鮮だけではない。山口県被団協の森田雅史会長(73)は「核保有国の存在が北朝鮮に保有を促している」と指摘。広島県朝鮮人被爆者協議会の李実根(リ・シルグン)会長(86)も「日本も韓国も、米国の『核の傘』を正当化する姿勢を見直し、北朝鮮に非核を促してほしい」と求めた。

 被爆地の自治体トップも抗議の声を強めた。広島市の松井一実市長は市役所で記者団の取材に応じ、「絶対悪である核兵器をなくしてほしいと訴えてきた被爆者の思いを踏みにじる暴挙だ。国際社会は核兵器のない世界へ、方向性を今以上に打ち出してほしい」と訴えた。広島県の湯崎英彦知事は「断じて容認できない。北朝鮮が、核兵器廃絶と恒久平和を願う国際世論と広島県民の願いを真摯(しんし)に受け止め、今後一切の核開発を放棄することを強く求める」とコメントを出した。知事、市長とも金(キム)正恩(ジョンウン)第1書記宛ての抗議文を郵送した。

(2016年1月7日朝刊掲載)

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