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旅の趣向に「お国柄」 中国地方 外国人観光客が急増

台湾・香港から 本通り商店街・大久野島… 買い物や自然散策

欧米から 平和公園・鞆・千光寺公園… 歴史や文化に関心

 外国人観光客が急増する中国地方で、旅行者が訪ねるスポットに「お国柄」が出ている。広島県では、平和記念公園(広島市中区)が定番となっている欧米人に対し、台湾や香港からの観光客は本通り商店街(同)での買い物や自然散策を好む傾向がある。自治体や旅行業者は、国・地域ごとの好みに合わせ、より広域でもてなそうと知恵を絞っている。(樋口浩二)

 昨年12月下旬、本通り商店街。20歳~50歳代の台湾人ツアー客約40人がドラッグストアに入ると、飲み薬や塗り薬を次々と買い物かごに入れた。「日本の薬はよく効くと評判よ」。約20個を4万円で買った劉敬秀さん(44)は笑顔を見せた。

「最も魅力的」

 企画した台湾の大手旅行代理店によると、周辺の家電量販店も含む商店街一帯は「中国地方で最も魅力的なスポット」。広島県が昨年、旅費の一部を助成した台湾発の計100回のツアーは全て、商店街一帯をルートに組み込んだ。一方で、平和記念公園を訪れるツアーは全体の約6割にとどまる。

 台湾や香港などアジアからの観光客には、豊かな自然も好評だ。例えば、竹原市の離島・大久野島は、繁殖している野生ウサギや瀬戸内海の眺望が人気となっている。

 一方、大半が個人旅行という欧米人は、平和記念公園を軸にした旅程が目立つ。数週間のバカンスで訪れる欧州からの観光客は特に「東京、京都を経て、平和記念公園を目指すルートが定番」(広島県観光課)。昨年12月下旬、家族5人で原爆ドームを見学していたフランス人大学生コモ・ビヨレイさん(22)は「被爆の惨状を学ぶために来た。広島観光では原爆ドームと宮島は欠かせない」と語った。

 歴史や文化への関心が強く、古い町並みにも立ち寄るのが特徴。江戸時代の町家が残る福山市鞆町や、尾道市の市街が見渡せる千光寺公園を訪れる人も増えているという。

5県連携強化

 中国地方はこれまで、関東や関西、九州を旅する際の通過点となりがちで、宿泊日数が少ないのが弱みだった。各県は旅行客の好みを踏まえ、連携して5県での滞在期間を増やす試みを進める。広島、島根両県は、県境近くにある琴引フォレストパーク(島根県飯南町)のそり遊びをアジアの旅行会社に売り込み、予約が相次いでいる。

 飲食店など観光情報の充実が滞在の鍵とみる広島市は2014年秋、市中心部一帯を公衆無線LANサービスの提供エリアとする実証実験を始めた。

 広島県商工労働局の寄谷純治局長は「お国柄を踏まえたおもてなしに隣県と工夫を凝らし、中国地方を周遊するリピーターを増やしたい」と意欲を燃やす。

中国地方の外国人観光客
 観光庁がまとめた2015年1~10月の中国地方5県の外国人宿泊者数は広島61万7320人、岡山14万7420人、鳥取8万2920人、山口7万940人、島根3万830人。いずれも14年の年間数を既に上回り、増加率は約1~4割となっている。

(2016年1月11日朝刊掲載)

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