×

ニュース

「被爆者手当」を要望へ 日本被団協 4手当を一本化

 日本被団協は25日、都内で代表理事会を開き、全被爆者を対象にした新たな援護策「被爆者手当」を国に求めることを決めた。病気や病状に応じ4段階で支給し、現行の原爆症認定制度は廃止する。厚生労働省の「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」に提案する。

 被爆者手当は、約9割が受ける健康管理手当(月額約3万4千円)や原爆症認定者の医療特別手当(同約13万7千円)など4手当を一本化。基本額を健康管理手当と同程度とし、熱線、爆風、放射線による「総合的障害」の程度により3段階で加算。最高額は医療特別手当以上を求める。

 加算対象は、放射線の影響が認められているがんや白内障、肝機能障害など原爆症で「積極認定」される病気に加え、ケロイドや一定の外傷を想定。がんの種類や治療状況でも段階を分ける。加算対象、区分はあらかじめ政令で定め、申請者がどの区分に当たるかは医師の診断書などで判断する。原爆症認定のように申請ごとに原爆放射線と病気との関連(放射線起因性)を判断しない。

 被爆者手当はこの日都内で開いた緊急の全国都道府県代表者会議で報告、確認した。(岡田浩平)


<解説>被爆者手当 援護制度の改革を迫る

 日本被団協が25日に決めた「被爆者手当」は、原爆被害を放射線に限らない総合被害ととらえる援護を求めてきた長年の運動に沿って導き出した。単に原爆症認定制度見直しという枠を超え、放射線被害に限る国の被爆者援護行政そのものの抜本改革を迫っている。

 「法律の根っこを変えるのが趣旨だ」。全国都道府県代表者会議で議長を務めた愛媛県原爆被害者の会の松浦秀人事務局長(66)は手当を提案する意義をそう強調した。

 被爆者手当は、あらかじめ政令で定めた病気、病状になれば金額を加算し、放射線起因性を個別判断しない。今の原爆症認定で判断基準にされる、直爆時の距離や入市時期を問わないことになる。

 国が「国際的な科学的知見」に依拠して放射線起因性を判断してきた背景には、一般戦災者と区別する「放射能による特殊被害」をとらえた被爆者援護法の考え方がある。しかし、科学的知見に基づく判断だけでは、体への影響が未解明とも指摘される内部被曝(ひばく)をはじめ原爆被害の実態をとらえきれない。

 被爆者手当は、病気や病状によっては現行の原爆症認定制度で受け取る手当より減額になる可能性もあり、被団協は自ら身を切る姿勢を示したとも言える。国は被爆者にどう寄り添うか問われる。

(2012年1月26日朝刊掲載)

年別アーカイブ