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野党共闘が本格始動 参院島根・鳥取合区 政策の溝越える連携模索

 夏の参院選で島根、鳥取両県の合区選挙区(改選数1)に、新人で元消費者庁長官、福島浩彦氏(59)が無所属での立候補を表明し、野党共闘が本格的に動き始めた。福島氏は自ら共同代表を務める「住民目線で政治を変える会・山陰」を中心に、自民党公認で島根県選出の現職青木一彦氏(54)に対抗する野党統一候補として幅広い層の支持を集めたい考え。各党や支援団体が、政策の違いを越えて連携できるかが注目される。(秋吉正哉、川崎崇史)

 18日、米子市であった福島氏の立候補表明の会見後、民主党の島根、鳥取両県連の幹事長は、福島氏に歩み寄り、握手を交わした。前日、本人から立候補の意志を伝えられたという鳥取県連の興治英夫幹事長は「安倍政権にブレーキをかけるための戦いができる」と安堵(あんど)の表情を見せた。19日、党本部は福島氏の推薦を決めた。

 両県連は昨年12月、市民組織の設立を呼び掛け、福島氏に立候補を要請。だが、福島氏はことし1月11日に「住民目線の会」を発足。両県連の関係者からは「福島氏の真意が読めない」などと困惑の声も上がった。

■拒否反応も

 結果、民主党は「市民が政党を巻き込んでいくのが理想」とする福島氏のバックアップに回る形になった。福島氏は「どんな政党、団体とも話し合いたい」とし、共産党、社民党を含めた野党統一候補への意欲を示す。

 だが、民主党支持層には、2014年12月の衆院選島根1、2区などで共闘の実績がある社民党とは異なり、共産党への拒否反応もある。連合島根の原田圭介事務局長は「歴史的経緯もあり、政策の違いもある。共産と一緒になっての活動は不可能だ」と明かす。

 島根原子力発電所(松江市鹿島町)のある中国電力系労組も参画する連合島根にとって、原発の再稼働問題へのスタンスも懸案となる可能性がある。「福島氏は『原発即時ゼロ』の立場ではない」(原田事務局長)として福島氏を支援したい考え。だが、福島氏は「再稼働には少なくとも周辺自治体の同意が必要。前のめりの姿勢には反対だ」。原発事故への不安が根強い両県民にどう訴えるか。難しさを残す。

 共産党は、福島氏と政策面で折り合えるか慎重に見極めている。安倍政権が昨年9月に成立させた安全保障関連法について、福島氏は「安保法の違憲部分を廃止する法改正が必要」との立場だからだ。

■「小異捨て」

 同法廃止の一点で野党共闘を掲げる共産党にとって、「全廃」は譲れない条件。同党島根県委員会の尾村利成副委員長は「鳥取県委員会も交え、近いうちに福島氏と話し合う」としており、合区選挙区で公認が決まっている新人の遠藤秀和氏(37)の擁立取りやめの検討は、今後の調整次第となっている。

 「小異を捨て大同につく必要があるというのが有権者の望み」。事情を抱えながらも、複数の野党関係者は共闘の必要性では一致する。「自民党1強」といわれる政治状況の中、どこまで共闘が内実を伴う態勢になるか、模索が続いている。

(2016年1月20日朝刊掲載)

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