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連載・特集

おいしい笑顔 届けた半世紀 広島アンデルセン 建て替えへ 17日、通常営業終える

 広島市中区の本通り商店街の被爆建物で、半世紀近くパンを販売してきた広島アンデルセン。全館を建て替えるため、17日に現建物での通常営業を終えた。最終日には多くの市民が訪れ、本通りの象徴にもなっていた店の風景を目に焼き付けた。

 「ありがとう」。閉店間際になると、名残惜しそうに店を出る客たちが従業員に声を掛けていた。目を赤くする人も。店は使うのが最後となった石窯でパン約千個を焼き、無料で配った。売り場にあった花もプレゼントした。

 広島アンデルセンの旧館は1925年、三井銀行広島支店として建てられ、帝国銀行広島支店だった時に被爆。67年にアンデルセングループが購入して店にした。78年には棟続きの新館を建て、カフェやパーティー会場も営んできた。親子2代で結婚披露宴や同窓会の会場に使う人もいた。

 グループにとっても「原点」。創業した高木俊介、彬子夫妻は広島アンデルセンで欧州の雰囲気を再現しパン食文化を広島に浸透させようと情熱を注いだ。

 建て替え後の再オープンは2020年度を目標とし、被爆した外壁は保存する方針。持ち株会社、アンデルセン・パン生活文化研究所(中区)の林春樹社長は「常にグループが進むべき道を示してくれる店だった。創業者夫妻の思いを新店にも引き継ぎたい」と力を込める。(写真・河合佑樹、文・川上裕)

(2016年1月20日セレクト掲載)

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