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岩国市長に福田氏再選 艦載機 民意は「現実的対応」

 岩国市長選は29日投開票され、現職の福田良彦氏(41)が、返り咲きを目指した元職の井原勝介氏(61)と新人の市民団体事務局長吉岡光則氏(66)=共産推薦=を破って再選を果たした。3氏はいずれも無所属。2014年までの米海兵隊岩国基地への空母艦載機移駐をめぐり、受け入れ方向で地域振興策などを国へ求める福田氏の「現実的な対応」を民意は選んだ。

 今回は、在日米軍再編に伴う岩国基地への艦載機移駐や、移駐に伴う米軍住宅建設を目指す愛宕山地域開発事業跡地の国への売却が迫る中、その是非を問う選挙戦。

 福田氏の勝利で、愛宕山跡地売却など艦載機移駐の受け皿づくりが今後、進むのが確実になった。移駐を前提とする安全対策や地域振興策を国と条件交渉し、住宅防音工事区域の拡大や愛宕山跡地への運動施設整備などを引き出した福田氏の現実路線が継続する。

 福田氏は「4年間のまちづくりの礎を形にしたい」と、選挙戦では12年度の民間空港再開などの実績や市政継続の必要性を強調。生活交通バスの利便性向上、医療体制の充実など暮らしの施策を中心に訴えた。地元選出の自民党県議、市議、企業関係者もフル回転。公明も支持を打ち出し、手堅く票をまとめて2氏を退けた。

 しかし、選挙戦では、協力姿勢の福田氏と反対派の井原氏は移駐問題にほとんど触れず、論戦は深まらなかった。井原氏は市民税減税などの景気対策を主張。愛宕山跡地の国への売却反対を唱え、追い上げを図ったが及ばなかった。吉岡氏は艦載機移駐反対と愛宕山跡地への米軍住宅建設反対を訴えたが、支持を伸ばせなかった。

 当日有権者数は11万8398人。投票率は64.01%で前回の76.26%を大幅に下回った。(酒井亨)

福田良彦(ふくだ・よしひこ)氏
 衆院議員秘書から1999年、旧岩国市議に当選。2003年、山口県議に転じ、05年の衆院選山口2区で当選。08年の岩国市長選で初当選した。岩国市出身。法政大法学部卒。

民空を活用し経済活性化 福田市長の話
 この4年間、一生懸命取り組んできたことが支持された。再開する民間空港などを活用した経済活性化、農林水産業の振興、子育て支援や医療体制の充実などに全力を尽くす。


<解説>移駐進展の公算大きく

 米軍再編に協力姿勢を示す現職福田良彦氏が再選を果たした。厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機移駐は今後、実現に向け動きだす可能性が高まった。「普天間の解決」を条件とする福田氏と、2年後に移駐を予定する国の動きが今後の焦点になる。

 福田氏再選の背景にはこの4年間のさまざまな要素が絡んだ。

 まず政治環境の変化だ。野党時代に「再編見直しの方向で臨む」と訴えていた民主党が政権与党となり、移駐への準備を着実に進める姿勢に変化した。

 経済環境もある。長引く不況に加え、東日本大震災も発生し、民意が基地問題だけではなく、直面する暮らしや経済活性化の施策を重視したともいえる。

 移駐部隊の住宅を計画する愛宕山地域開発事業跡地売却も市長選を前に国と合意。移駐のデメリットが認識される以前に、市民には地域振興という「アメ」だけが強調された面も否めない。

 前回は福田氏と井原勝介氏が移駐をめぐり対決した。井原氏の移駐反対を理由に、国は市庁舎建設補助金を凍結するなど再編問題が見える形の選挙戦だった。

 しかし、今回は7日間の舌戦も再編を含め焦点がかすみ、結果として、移駐反対を掲げた井原氏と吉岡光則氏の間で勢力が分断した。低下した投票率が変化を物語る。

 井原、吉岡両氏の獲得票は移駐後の市民の不安を反映している。「国と対等なテーブルに着き、言うべきことは言う」と強調する福田氏にはその不安を解消する重い仕事が待っている。(酒井亨)

(2012年1月30日朝刊掲載)

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