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妻の「あの日」映像で追う 東京フェス優秀賞

 広島市東区の特定社会保険労務士松田治三(はるみ)さん(75)が、広島での被爆体験を持つ妻(71)の「あの日」をたどった映像作品で、東京のNPO法人主催の映像祭「市民がつくるTVF(東京ビデオフェスティバル)」の優秀作品賞に選ばれた。2月18日に東京で表彰式がある。(山本堅太郎)

 作品は「閉ざされた65年前の惨禍」(9分57秒)。当時5歳だった妻は、爆心地から約1.7キロの白島東中町(現中区白島中町)で被爆した。母親、弟と一緒に戸坂小(現東区)まで逃れた道のりを、松田さんが当時の地図や住民の証言を基に実際に歩いて撮影した。

 4人の孫の平和教育のために、妻の証言を残そうと思い立ち、2010年春から準備を始めた。だが、「思い出したくない」と断られた。それでも、妻から約50年前に聞いた被爆体験の記憶を頼りに足跡を追い、翌年明けに完成した。

 TVFでの受賞は2回目の松田さん。09年には、自身の潰瘍性大腸炎との闘病ドキュメントで佳作だった。今回は、国内外206作品の中から優秀作品賞15作品に選ばれた。

 松田さんは「妻にとっては二度と思い出したくないこと。それでも、孫に原爆の悲惨さを伝えられたと思う」と振り返った。

(2011年1月30日朝刊掲載)

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