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広島市が劣化度調査へ 原爆資料館収蔵の2万点 新年度 傷み激しい物は保全

 広島市が新年度、原爆資料館(中区)で収蔵する被爆関連資料の劣化度調査に乗り出すことが28日、分かった。約2万点を初めて網羅的に調べ、傷みが激しい物は順次、保存処理をする。過去に一部資料については保全に取り組んだが、被爆71年を迎え、全体的な対策が急務となっていた。

 熱線で焼け焦げた衣服、化学変化を起こした写真、映像フィルムなど、傷みが目立つ物から調べる。目視のほか、素材によっては顕微鏡や特殊な薬剤の使用を想定する。劣化対策には、脱塩処理による酸化防止、樹脂による補強などがあり、それぞれ最適な方法を採用して進める方針でいる。

 市は1996年度から2006年度にかけて、炭化した弁当箱、三輪車など21点の複製を作り、一部資料の保存処理もした。展示室内の照明を抑え、収蔵庫の温度を一定に保つなどしているが経年劣化は深刻だ。昨夏には、展示資料のうち原爆投下時刻の午前8時15分で止まった懐中時計の短針が朽ちて折れる事態も起きた。

 市は、来月15日に開会予定の市議会定例会に提出する16年度の当初予算案に、関連費用として1500万~2千万円程度を計上する方針。4月1日からの資料館入館料の値上げで浮く財源を充てるとみられる。この値上げによる増収は年約1億3千万円を見込んでおり、ほかに被爆建物の保存や被爆樹木の樹勢調査、国内外の青少年の広島訪問の後押しなど、被爆の実態を伝える事業に広く使う。(田中美千子)

(2016年1月29日朝刊掲載)

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