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社説・コラム

社説 民主党大会 対立軸 はっきりと示せ

 反転攻勢をかけるとすれば、ここをおいてあるまい。民主党は、野党第1党としての役割を果たせるだろうか。

 民主党大会は、甘利明前経済再生担当相が金銭授受疑惑で辞任した2日後に開かれた。「政治とカネ」問題をはじめ、安倍政権にどう切り込むか。夏の参院選をどう戦うのか…。発信するチャンスだった。しかし、進もうとする方向が明らかになったとは、とても言い難い。

 維新の党と合流するかどうかも、不透明なままである。岡田克也代表は「新党結成も選択肢として排除されていない」として、維新の松野頼久代表との協議に入る考えを表明したものの、合流方法には踏み込まなかった。「3月末がデッドライン」と決断までの期限を繰り返すにとどまった。

 「安倍政権を打ち負かす大きな力の結集を図る」と活動方針にうたいながらも、参院選に向けた選挙態勢がいまだ定まらないのである。各選挙区での野党共闘の動きも鈍い。

 どんな理念や政策の下に野党が結集しようとしているのか、国民からするとまだ判然としない。安倍政権との対立軸は何なのか、民主党ははっきりと打ち出すべきではないか。

 「安倍政権の暴走」にブレーキをかけたいとの思いは伝わってくる。安全保障関連法を昨年成立させた安倍晋三首相は、参院選では改憲勢力で3分の2以上の議席を得て、憲法改正を発議する構えも見せているからだ。憲法が権力に歯止めをかける立憲主義をないがしろにするかのような姿勢に対し、違和感を覚える国民は少なくない。

 先日発表した参院選ポスターには、「民主党は嫌いだけど、民主主義は守りたい」とある。不人気な現実を踏まえた苦肉の策のコピーらしい。この土日に共同通信社が実施した世論調査でも、安倍内閣の支持率は53・7%、自民党が42・1%と上向いたのに対して、民主党は9・5%と少し下がっている。

 政権担当時の失政に対する失望感が尾を引いているのだろう。「一強打破」の旗だけで有権者を振り向かせるのは難しいと言わざるを得ない。

 別のポスターでは、「1人ひとりを大切にする国へ」ともうたう。党綱領に掲げる「共生社会」に根ざし、すべての人に居場所と出番を用意する呼び掛けだが、安倍政権が掲げている「1億総活躍社会」との違いが分かりにくい。

 安倍政権はほかにも、民主党のお株を奪うような政策をあれこれと打ち出し始めている。「同一労働同一賃金」はその一つだ。正規雇用と非正規雇用の賃金格差をなくすため、民主党が看板としてきたものである。中身は全然違うというが、どこがどう違うのか、しっかりと説明してもらいたい。

 無駄な公共事業をやめようと、かつて呼び掛けた「コンクリートから人へ」のスローガンは多くの人の胸に響いた。それに代わるメッセージを発信する必要がある。

 それは結局、一つ一つの政策に磨きをかける中から見いだすしかないのだろう。大会では、「地方の声」「女性の力」「若者の視点」の三つを党再生のエネルギー源とした。その通りだろう。上っ面の言葉だけに終わらせてはいけない。

(2016年2月1日朝刊掲載)

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