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現場発2016 自民対非自民 決戦の構図か 夏の参院選 島根・鳥取合区 

有権者の関心 県境の壁

 夏の参院選で導入される島根、鳥取県の合区選挙区(改選数1)で、自民対非自民の構図が大きく動き始めた。軸となるのは、自民党公認で島根県選出の現職青木一彦氏(54)と、野党統一候補を目指し無所属で立候補を表明した元消費者庁長官の新人福島浩彦氏(59)。300キロ近い東西に長い選挙区で、県境をまたいでどう有権者の関心を高め、支持を集めるか。あと半年を切った選挙に向け、双方の関係者からは不安も漏れている。

 「鳥取選出の国会議員として推し立ててほしい」。鳥取市のJR鳥取駅前に1月17日、青木氏の声が初めて響いた。県内での街頭演説は日吉津村に続いて2度目。自民党鳥取県連会長の石破茂地方創生担当相(衆院鳥取1区)もマイクを握り「山陰で力を合わせよう」と訴えた。

 県連はこの日、青木氏の鳥取後援会を設立。島根県連と合わせて後援会の態勢が整った。昨年末、鳥取県内でも始めた青木氏のあいさつ回りは今後、鳥取、島根で8対2の比率という。ミニ集会主体の島根方式ではなく、街頭重視の鳥取の方針に従う。

共闘 広がり不透明

 「憲法改正の動きを止めなければならない」。同18日、福島氏は出身の米子市で開いた立候補会見で安倍政権に対抗する姿勢を前面に打ち出した。立候補を要請した民主党島根、鳥取両県連を通じて同党本部が翌19日に推薦を決め、続いて連合島根、鳥取も推薦。社民党の両県連合も党本部に推薦申請している。

 ただ、福島氏は千葉県我孫子市長を1995年から3期12年務めた経験から「市民が政党を巻き込むのが理想」とし、党派を超えた幅広い連携の選挙戦を思い描く。非自民勢力の結集を目指す市民団体「住民目線で政治を変える会・山陰」を発足し、共同代表に就任した。福島氏の方針を尊重し、民主党両県連は政党間の調整を担う連絡会議を設け、後方からの支援に力を入れる考えだ。

 動き始めた両者には、合区選挙区特有の県境の壁が立ちはだかる。自民党鳥取県連の安田優子幹事長は「特に島根県東部と生活圏が一体である県西部は、青木氏への反応がいい」と受け止める。だが、その西部で地域支部長の経験もある男性党員(69)は「青木さんの名前を周囲の人はまだ知らん。合区を理解していない人も多く、協力をお願いするのが大変」と明かす。

 福島氏についても、立候補が取り沙汰されていた昨年末、出雲市で講演を聞いた労組組合員男性(54)は「もともと米子出身でもあるし、消費者庁長官などの経歴も知らない聴衆がほとんどだと思う」と話した。

 福島氏の野党共闘がどこまで広がるかも不透明だ。共産党は共闘を視野に新人遠藤秀和氏(37)の擁立取りやめを検討する方向だが、安全保障関連法をめぐって福島氏との立場の違いが浮かび、調整が続いている。

知名度 現職も焦り

 「正直、焦っている面もある」。青木氏の地元、自民党島根県連の森山健一幹事長は、国会開会中で青木氏が週末しか戻れなくなった現状に気をもむ。「残されたぎりぎりの時間で(名前を)売り込んでいくしかない」と厳しい選挙戦を予想する。

 「ただでさえ島根は東西に長く、さらに東の鳥取は果てしない」。島根県最西端の津和野町観光協会の小林智太郎会長(45)は「合区の実感は湧かず、話題にもならない」と続ける。あと半年を切った選挙に関心の高まりはまだ見られない。

 合区選挙区には、緒派の幸福実現党の新人国領豊太氏(34)も立候補を表明している。

(2016年2月2日朝刊掲載)

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