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被爆石像「羅漢さん」物語 東区の広島光明学園 園児ら6日創作劇を披露

 被爆直後の広島市内で拾われ、今は東区牛田本町の光明寺に安置されている石像「被爆顔なし羅漢さん」をめぐる物語が完成した。近くの認定こども園・広島光明学園の職員が、身近にある羅漢像を通して平和の尊さを伝えようと、地元住民への取材を基に創作。園児が6日、物語を台本にした劇を披露する。

 石像は高さ約50センチの羅漢像。爆風で欠けたとみられる顔はセメントで補修され、目鼻が描き入れられている。昨年12月に境内へ移されるまで、70年にわたり東区牛田旭の住宅街の一角に据えられていた。

 物語は、被爆した街の惨状を伝える場面から幕開け。白島(現中区)付近で倒れ、顔も壊れた石像を、牛田に住む男性(故人)が哀れみ、持ち帰った経緯を織り込む。住民たちがその後、平和の大切さを後世に伝える地蔵として、ほこらを建てたり花を供えたりし、祈りをささげてきた姿をたどるストーリー。

 被爆70年の節目を迎えたのを機に昨年8月、同園職員が70~90代の地元住民16人に取材を開始。聞き取った安置場所の変遷やエピソードを踏まえ、手分けして文章にした。

 碓井智紗子園長(70)は「原爆によって人や動植物、羅漢さんなど全てが傷ついたことを伝え、平和の尊さを子どもと考えたい」と話す。物語は近く、挿絵を加えて絵本にする計画だ。

 取材に協力し、練習の見学に訪れた曽根エミ子さん(88)と西村信江さん(83)は「長年、心のよりどころにしてきたお地蔵さん。子どもたちに知ってもらえてうれしい」と目を細めていた。

 劇は6日午前9時から中区白島北町の上野学園ホールで開く発表会の演目の一つ。同園と牛田新町光明保育園(東区)の園児計104人が出演する。一般の観覧もできる。(奥田美奈子)

(2016年2月3日朝刊掲載)

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