×

社説・コラム

社説 北朝鮮発射通告 米中で撤回への圧力を

 その暴走が度を越しているといえよう。北朝鮮が地球観測衛星を8日から25日の間に打ち上げると国際機関に通告した。ロケットと弾道ミサイルで用いられる技術は基本的に同じだ。平和利用を口実にしたミサイル発射実験にほかなるまい。

 各国こぞっての批判を意に介するそぶりもなく、発射準備を進めているようだ。強行すれば国連安全保障理事会の決議に違反する。わずか1カ月前の4回目の核実験をめぐり、新たな制裁決議を議論しているさなかである。国際社会への重大な挑発行為であり、危機を招く。金(キム)正恩(ジョンウン)第1書記は直ちに発射計画を撤回すべきだ。

 北朝鮮北西部から南向きに打ち上げ、沖縄県・先島諸島周辺の上空を通ってフィリピン沖に落下すると予告する。前回、2012年12月に飛ばした長距離弾道ミサイル「テポドン2号」改良型と同じ経路だが、より大型のミサイルや何らかの新技術を試すとみられている。

 米本土を狙える大陸間弾道ミサイルの開発が目的だろう。並行して核実験で小型化を志向しているようだ。「核ミサイル」を手にすれば、相手の攻撃を思いとどまらせることができるという理屈かもしれないが、断じて認めるわけにはいかない。

 以前から米国に対話を迫り、体制を守る切り札として利用しようとしてきた。しかし今回、金第1書記は攻撃能力の国内外への宣伝をより意図しているのではないか。16日は故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕記念日であり、5月に開く36年ぶりの朝鮮労働党大会も念頭にあるだろう。経済的困窮が続く中、実績も乏しいゆえの焦りの裏返しと映る。

 このままでは国際社会からさらに孤立し、国民生活の向上は望むべくもない。そうした現実こそ直視すべきだろう。

 国際包囲網が今こそ問われているが、核実験に対する国連安保理の制裁決議の結論がまだ出ていないのはどうしたことだろう。とりわけ米中の温度差は懸念される。

 米国は石油輸出禁止など厳しい制裁内容を目指す。北朝鮮側が譲歩しない限り、相手にしない方針を貫く。一方、中国は北朝鮮の退路を完全に断つと、むしろ危険だからと慎重な姿勢をみせる。米中互いに責任をなすりつけ合う主張もしているが、悠長に構えていられる場合ではなかろう。

 このところ、中国の抑えが効かなくなっているのが気掛かりである。先の核実験では慣例だった事前通告をせず、今回は中国の朝鮮半島問題特別代表が訪朝したその日に打ち上げを通告した。面目をつぶすような行為であり、甘く見られていよう。中国は対話を続けるにしても、経済的な制裁に本腰を入れるべきではないか。

 まずは利害を調整し、国連安保理による制裁を急ぎたい。米中を軸に圧力をかけ、北朝鮮に対して「自制せよ」と、明確なメッセージを送り損なってはなるまい。

 国際協調のほころびは北朝鮮に猶予を与えかねない。これまでも6カ国協議の枠組みを設けながら、核実験やミサイル開発を止めるどころか逆に技術の向上を招いてしまった結果を思い返したい。金第1書記の言動が予測不可能になりつつあり、強固な包囲網を築きたい。

(2016年2月6日朝刊掲載)

年別アーカイブ