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「またか」 不安・憤り 中国地方 被爆者ら核搭載懸念も 北朝鮮ミサイル発射

 「またか」「核兵器の搭載につながりかねない」。北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、被爆地広島をはじめ、中国地方各地で7日、不安や憤りの声が渦巻いた。一方で、制裁強化などにより日本が標的にされる可能性を不安視する意見や、冷静な対応を求める声も目立った。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(73)は「北朝鮮には付ける薬がないのか」と絶句した。1カ月前に核実験の発表を受け、原爆慰霊碑前で抗議の座り込みをしたばかり。「核兵器のミサイル搭載を考えているとしたら恐ろしい。被爆者として許せない」と語気を強めた。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(71)も「軍事力で国際社会をけん制するのは、間違っている」と非難。「被爆国日本は『核の傘』に頼らないとの立場をはっきりさせた上で、北朝鮮に非核を強く訴えてほしい」と求めた。

 松井一実広島市長は「被爆者のつらく悲しい体験に基づく平和への願いを踏みにじる行為だ」とのコメントを発表。湯崎英彦広島県知事や羽田皓福山市長、小村和年呉市長も「強い憤りを感じる」「平和と安定を脅かす行為で、極めて遺憾」などとした。

 市民からは、不安を口にする一方で、北朝鮮に対して慎重な対応を望む声が相次いだ。福山市の嘱託職員加藤和美さん(44)は「数日前から不安だった」と明かし、「非難の意思表示はすべきだが、北朝鮮に制裁で刺激を与え、日本が標的になるのは怖い」と戸惑う。

 広島市中区で中国新聞の号外を受け取った尾道市の会社員浜本武尚さん(33)は、過激派組織「イスラム国」(IS)を空爆したフランスがテロ攻撃を受けたことを念頭に「北朝鮮も、制裁を強めればさらに強硬になる可能性がある。日本政府は当面、北朝鮮を刺激しない方がよいのでは」と求めた。

 国際社会は一層の連携が必要だと説く人も。安来市の無職島田篤紀さん(75)は「日本だけの制裁では効果はない」とし、米海兵隊岩国基地がある岩国市の園芸家松本行男さん(69)も「古里にミサイルの矛先が向けられないよう、国際社会が足並みをそろえて対応してほしい」と注文する。

 被爆地から核廃絶の訴えを強め、平和的解決を模索すべきとの意見もあった。三次市の主婦和田祐子さん(38)は「東アジアの不安定化が心配。核保有国が核廃棄の流れをつくってこそ、北朝鮮への説得力が出る」と指摘。尾道市の会社員杉田裕一さん(68)も「話し合いでの解決が重要。全ての国が核兵器を放棄するよう、ヒロシマから発信する必要がある」と力を込めた。

(2016年2月8日朝刊掲載)

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