×

社説・コラム

天風録 「爆竹とミサイル」

 魔物や邪気を大きな音で追っ払うのだという。きょう春節(旧正月)を迎えた中国で、派手に鳴らされる爆竹や花火のこと。もっともけが人や火事が相次ぎ、大気汚染を悪化させるとして、最近は禁じる都市もある▲代わりにではあるまいが、隣国がとんでもないものを打ち上げて、衝撃をとどろかせた。北朝鮮の長距離弾道ミサイルである。核実験に続く暴挙だが「宇宙利用の権利を堂々と行使した」とは、迎春の祝砲のつもりか▲後ろ盾となってきた中国政府は、年の暮れにメンツをつぶされた格好である。発射を思いとどまるよう、口を酸っぱくして説いたはずなのに、またしても無視された。めでたいはずの正月料理を苦々しくかみしめているのではないか▲日米もまた「暴発」にお手上げ状態である。自制を求める国際社会に対し、発射予定の前倒しを通報したかと思えば、翌日にはもう強行してきた。予測のつかない動きに、すっかり振り回されている。何とも歯がゆい▲「今後も打ち上げる」と、世界に火の粉を散らしかねない。核ミサイル開発という「魔物」封じへ。中国を含め足並みそろえた制裁で、包囲しなければなるまい。もちろん火薬には頼らず。

(2016年2月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ