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社説・コラム

『潮流』 8月ジャーナリズム

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長・宮崎智三

 知り合いのフリーライターから毎週届くメールマガジン「季節通信」が待ち遠しい。A4判1枚に、花鳥風月を取り上げた写真と文章。四季折々の変化が感じられ、長時間、パソコンに向かう身にはありがたい。最新の2月10日号は、ひなたぼっこする猫の写真がメーンだった。

 季節感を大切にしたい。誰もが願うことだろうが、メディアによっては、年間を通して訴えたいテーマもある。中国新聞にとっては、平和がその一つだ。

 ともすれば、戦争関連の報道は、8月6日ごろから「終戦の日」の15日までに集中しがち。「8月ジャーナリズム」と批判されるゆえんだ。追悼行事や式典などが数多く開催されるから、やむを得ない面はある。それでも、耳が痛い。

 結局、日ごろの積み重ねがいかに大事か、なのだろう。年中、関心を持って読んでもらう工夫を凝らしてはいる。例えば月曜の「平和」のページだ。スタートして3月から5年目に入り、定着してきた。

 定期的に載せている、被爆証言を聞くコーナー「記憶を受け継ぐ」は80回を超えた。老いを重ねる被爆者たち。今しか聞けない証言を一人でも多く聞き、残しておきたい。取材する中高生のジュニアライターも、同行する大人記者も、同じ思いだ。

 被爆71年の今年、若い世代に光を当てるコーナー「あすへのバトン」を新設した。平和を願って活動している若者は少なくない。10年目を迎えたジュニアライターの「卒業生」も含め、取り組みや思いを語ってもらっている。被爆証言に負けない息の長いコーナーに育てていきたい。

 四季は毎年巡って来る。同じように見えるが、どこかに微妙な変化があるはずだ。原爆・平和報道も同じかもしれない。時代の流れを見ながら、いかに充実させていくか。答えを探し、試行錯誤する日々が続く。

(2016年2月11日朝刊掲載)

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