×

社説・コラム

天風録 「追憶の日」

 きょう2月19日は米国の日系人にとって、重い意味を持つ。デイ・オブ・リメンバランス(追憶の日)と、彼らは呼ぶ。日米開戦の翌年、ルーズベルト大統領が西海岸で暮らす日系人の強制立ち退き命令に署名した日である▲その数は12万人。当時、現地で出ていたあまたの邦字紙をマイクロフィルムで何年分も読んだことがある。冷静な対応を呼び掛ける紙面が「最後のご奉仕」と投げ売りする商店の広告であふれていたことに胸が痛んだ▲その新聞も次々と発行停止に追い込まれ、日系社会はまるごと鉄条網に囲まれた強制収容所へ。戦後も「ジャップお断り」の張り紙が残る街で、市民の権利を取り戻す闘いを続けた。語り継ぐべき苦難の道だろう▲米政府が謝罪し、補償したのは戦後43年たってからだが、例のトランプ氏のように正当化する声はくすぶる。その中で「米国の最も暗い歴史」とオバマ現大統領は断言した。自由をうたう国の反省の深さだと信じたい▲現に国立のスミソニアン米歴史博物館はきょう忘れぬための行事を開く。収容所に関する資料も募るそうだ。そんな国のリーダーについて「黒人、奴隷が大統領」と放言したわが国議員の愚かさも思う。

(2016年2月19日朝刊掲載)

年別アーカイブ