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社説・コラム

『書評』 郷土の本 高畑監督が語る岡山空襲の恐怖

 1737人以上が死亡した1945年6月29日の岡山空襲。学生時代を過ごした岡山市を「私の原点」というアニメ映画監督の高畑勲さん(80)が、自身の空襲体験を「君が戦争を欲しないならば」=写真=にまとめた。昨年、同市で行った講演の内容に加筆した。

 家族とはぐれ、焼夷(しょうい)弾で焼き尽くされた街を逃げ惑う恐怖を明かす。家を失い、郊外の農家に間借りしながら民主主義教育と新憲法に接した驚きもつづる。

 野坂昭如の原作をアニメ化した「火垂(ほた)るの墓」は反戦映画の名作と評価されている。しかし、著者は「あんな悲惨なことにならないためにこそ、戦争をしなければならない」という論理に結び付く危うさを説く。本の表題になった問いの答えとして、戦争を始めた理由と、当時の為政者、国民の振る舞いを「知る」ことの重要性を強調する。63ページ、562円。岩波ブックレット。

(2016年2月21日朝刊掲載)

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