×

ニュース

沖縄戦の悲劇たどり10回目 広島経済大ら60人 証言聞き避難の道50キロ歩く

 太平洋戦争で地上戦の舞台となった沖縄を広島経済大(広島市安佐南区)の岡本貞雄教授のゼミ生たちが徒歩で巡礼する「オキナワを歩く」が、10回目を迎える。学外も含めた約60人が22日から4日間の日程で参加する。沖縄戦の証言を聞き、命の尊さを見つめる。

 米軍の上陸後に人々が逃げた足取りなどをたどりながら、約50キロは徒歩で移動する。ひめゆりの塔などの慰霊碑や野戦病院として使われていた壕(ごう)を巡り、負傷兵を看護していた元女学生たちから証言を聞く。3日間の食事は栄養補助食品と飲料だけにし、当時の苦しい食糧事情を体で感じる。

 2006年度のゼミの卒業旅行先が沖縄に決まり、戦跡を見学しようと始めた。証言者や宿泊施設の手配に苦労し、道を間違えるなどの失敗もあったという。ゼミがテーマに掲げる「いのちを見つめる」に沿い、当時炊事場があった場所から壕に食事を運ぶ「飯上げ」の体験をするなど内容も深めてきた。

 第1回のゼミ長だった佐伯区の会社員安部暢一さん(31)は「道中は大変だったが、今は舗装された道で、被弾の心配もない。当時の人はどんな気持ちで歩いたのだろうと考え続けた」と振り返る。

 「証言者の方から『またおいで』と言われ、学生が素直な気持ちで『また来ます』と答えた心の交流が10回につながった」と岡本教授。戦争の本当の悲惨さを少しでも肌で感じた学生は、戦争のない世界の実現のために役立つはずだと考えている。(新谷枝里子)

(2016年2月22日朝刊掲載)

年別アーカイブ